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ノーベル賞を取るための5か条 江崎玲於奈(物理学者) 江崎 振り返りますと、 これまでの88年の人生の中には いろいろなことがございましたが、 その体験を通して言えるのは、 自分で自主的に物事を判断し選択しながら 生きることがいかに大事かということです。 村上 それを先生はオプションと表現されていますね。 江崎 オプションというのは単なる選択ではありません。 選択する自由、つまり自分の意思というのが根底にあるわけです。 特に若い方々には自由な環境でいい選択をしながら 創造的な人生を送っていただきたいと切に願っております。 世の中にはいろいろなオプションがあります。 当たり前ですが、前の都知事のように 悪いオプションは取ってはいけません(笑)。 では何かを行おうとして、 目の前にリスクのあるものと リスクのないものがある場合の選択はどうか。 最近の傾向としてリスクを取らない人が 多いように思いますが、 それが誤りということを私は警告しておきたいと思います。 もちろん、端っから失敗に終わるような オプションは取るべきではない。 しかしそれをやることで自分が成長できるとしたら、 道は厳しくともそのオプションを取っていただきたいし、 私自身のこれまでの仕事を振り返ってみても そうやって生きてきたと思うんです。 村上 その時その時のよき選択があったからこそ、 ノーベル賞受賞などの栄誉に繋がっていったわけですね。 江崎 ただ、よく人生の逆境という言い方をしますがね。 家族の死や病気、戦争など自分の力ではどうしようもない問題は別として、 例えば仕事の上で生きるか死ぬかというような逆境に立たされたとしたら、 オプションが間違っていなかったかどうか、 やはり考えてみるべきでしょうね。 逆境を乗り越えることを美談とおっしゃる方もいますが、 私はそうではないと思う。 逆境は避けるべきであるし、それを予知できなかったとしたら、 それは本人の弱点ではないでしょうか。 研究者もそうですが、あまりに逆境ばかりに 身を置いていたのでは、何も生み出すことはできません。 私の言うリスクを取るということと逆境とは違うんです。 逆境は避けたいが、目の前にある壁をいかに乗り越えるか、 というチャレンジ精神がなくては 充実した人生を送ることはできないと思います。 江崎 創造性を育むにはオプションを活かすこととともに、 何事もよく「考える」ということも大変重要です。 私が勤めていたIBMには、 「Think」という標語があちこちに掲げられていました。 考えて考えて考え抜け、 という社員の心得を説いた言葉です。 アップル社のスティーブ・ジョブスも、 「Think different」、つまりただ考えるだけではなく、 違ったことを考えろ、と言っています。 これを受けて私が若い人に言いたいのは 「Think unthinkable」、考えられないことを考えなさいということですね。 先ほど申し上げたように、 エネルギーが粒子状態になっているという、 想像を絶するアンシンカブルなことをプランクが考え出し、 それが古典力学を超える量子力学の発展に繋がりました。 このように将来というものは 必ずしも過去の延長線上にはない。 現状維持、何もしないこと、伝統を守るということが リスクになることだってある。 そのことをしっかり理解してほしいと思っています。 村上 そういえば、江崎先生には、 ノーベル賞を取るための五か条という 有名な言葉がありますね。 お話を聞きながら、 いまそのことを思い出していました。 江崎 ああ、あれは私が1994年に国際会議で話した内容を、 ノーベル物理学賞の選考委員が聞いて、 スウェーデンの物理学専門雑誌に 「江崎の黄金律」として発表してくれたものです。 一、いままでの行きがかりにとらわれない 二、教えはいくら受けてもいいが、大先生にのめりこまない 三、無用なガラクタ情報に惑わされない 四、創造力を発揮して自分の主張を貫くには闘うことを避けてはならない 五、子供のような飽くなき好奇心と初々しい感性を失ってはいけない この五つは、私自身のモットーであるとともに、 いま私が日本に創造の風土を醸成するための 心得としていることでもありますね。 |
2014.04.01 |
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