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中村天風に学んだ心の力、言葉の力 沢井淳弘(京都産業大学名誉教授) 中村天風という偉人をご存じでしょうか。 当時不治の病といわれた 肺結核を克服した自身の体験から、 心を常に積極的に用いることを教え、 多くの人の運命を開花させてきた哲人です。 ――天風先生が亡くなった後も、 教えを実践してこられたのですか。 長年習慣化していた観念要素の更改、 体操、呼吸法は続けていましたが、 お恥ずかしながら瞑想や 誦句(自己暗示のことば)は 途中で止めていました。 50歳を過ぎるまで20年以上も やっていなかったんです。 天風先生の教えで万全な健康を取り戻し、 高校教師から大学教授まで教師として 順調に階段を上がっていったので、 慢心や油断のようなものが あったのかもしれませんね。 ――50代で再び始められた きっかけがあったのですか。 激しい腰痛を患って6か月間 休職を余儀なくされた時のことです。 病床でたまたま家内が持ってきてくれた 天風式瞑想のテープを聴きました。 過去に何回も聴いていた内容でしたが、 「あっ、瞑想とはこれなんだ」 と腑に落ちました。 以前は分からなかった本当の瞑想を掴んだ、 という感覚を得たんです。 それから毎日瞑想を続ける中で、 自然と苦しみや不安が薄らいでいきました。 ――瞑想で腰痛が治りましたか。 私の場合は、腰痛がなくなるというよりも、 瞑想を続けるうちに 「なんだ、こんな腰痛ぐらい」 「どうしても治らなきゃ教師を辞めるだけだ」 と開き直る気持ちが起こりました。 それから、本当の痛みも 薄らいだように思います。 そして50代も後半に差し掛かった頃、 私はもう一つ、深刻な悩みを 抱えるようになりました。 英語部長として大学の英語教育全体に 責任を持つ立場となったものの、 トップとの意見が合わず 口論を繰り返すようになっていったのです。 最初は「負けるもんか」と 張り合っていたんですが、 ある日突然、急性の鬱病になりましてね。 朝、起きたら何もやる気がしない。 まるで登校拒否ですよ。 ――どうされたのですか。 冷静に考えてみたら「たったそんなことくらい」 という話でしょう。 責任ある立場になれば、 誰だってトップと議論くらいするものですよ。 「俺はなんでこんなに弱くなったのか」 と思いました。 その時思い出したのが天風先生の言葉でした。 「人生の大きな問題に直面して、 自分の心の弱さを感じた時は、 その時の気持ちと強かった時の気持ちを 比較、検討するんだ」と。 以前に心が強かった時と、 いまはどこが違うのだろうかと考えた時、 そうだ!この頃は自己暗示の誦句を唱えていない、 と気づいたんです。 先生は心を鼓舞する自己暗示の誦句をつくっておられ、 若い頃の私はこれを唱えるのが日課でした。 ――どのような誦句ですか? 例えば次のようなものです。 「……私はいま、私の生命の中に、 新しい力と新しい元気とを感じる。 私はいま、心も肉体も新生しつつある。 同時に、私はいま、限りない喜びと 輝く希望とに小躍りする。……」 「私は今後かりそめにも、 わが舌に悪を語らせまい。 否、一々わがことばに注意しよう。 同時に今後私は、もはや自分の境遇や仕事を、 消極的の言語や、悲観的の言語で、 批判するようなことばは使うまい。 終始、楽観と歓喜と、輝く希望と、 溌溂たる勇気と、平和に満ちたことばでのみ生きよう」 私は再び誦句を唱えるようになり、 元気な時の感覚を呼び覚ましていきました。 悩みはなくなり、トップとの関係も すこぶる円滑になりました。 いろいろな問題は思い方一つ。 先生の言う「人生は心一つの置きどころ」なんです。 |
2014.01.30 |
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