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生活のあらゆる場面にアートが宿る 上前智祐(現代美術家) 日本の前衛美術における草分け的存在「具体美術協会」の 創立メンバーにして、 93歳のいまも現役を貫いています。 ――作品のアイデアはどのように 生まれてきたのでしょうか。 僕は川崎造船所でクレーンマンとして 21年間働いたあとに、 神戸製鉄所の下請け会社に移ったのですが、 その工場の全容を目の当たりにしているうちに 完全に魅了されてしまいました。 80メートルはある高炉の塔と、 その煙突から構内へと張り巡らされたパイプ、 絡み合うようにして伸びる複数の階段、 工場から工場へと進むベルトコンベアなど、 異様なまでの造形美が 僕の創作意欲を掻き立ててくれました。 他の労働者には無機質な風景としか 映らなかったのでしょうが、 僕はいつでも創作に飢えていたから、 工場全体が巨大なるアートに見えたのです。 ――面白い捉え方ですね。 僕はこの工場を「魔法の都市」と名づけました。 それから、これはもう 時効だと思うのでお話ししますけど、 構内は撮影が禁止されていたのですが、 ポケットにコダックのカメラを忍ばせて、 隠し撮りをしていたんです(笑)。 もう好奇心の塊でしたね。 他の作家のように新しい美術に触れる 自由な時間は殆どありませんでしたが、 この工場こそが僕にとっては 造形を教えてくれる「大学」そのものだったのです。 「縫い」の作品のもととなった素材も、 工場の機械に付着した油や汚れを 拭くためのボロ切れでしたが、 僕にとっては宝物でした。 ――生活そのものの中に アートがあるということですね。 捨てるものなんてなくて、 すべてがアートになるんです。 僕は60歳までクレーンマンとして働き続けたので、 自分の作品を切り売りしてまで 生計を立てる必要がありませんでした。 だから思うままに自由に 作品に打ち込むことができたんです。 ――過酷な肉体労働と創作活動を両立させるのは 大変なことだったと思います。 辛いと思ったことは 数えきれないほどありましたけど、 画をやめようと思ったことは 一度もありませんでした。 |
2014.02.03 |
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