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坂村真民と相田みつをが目指したもの 横田南嶺(円覚寺管長) 相田一人(相田みつを美術館館長) 西澤真美子(坂村真民氏ご息女) 横田 坂村先生と相田さんの共通点は 割とすぐに思いつくんですね。 やはり何と言っても仏教、 それも根本に坐禅がある。 曹洞宗と臨済宗の違いはあっても、 参禅して仏教を学んだということが、 お二人の作品の根本にあると思います。 だから共通して「本気」「本腰」を テーマに詩を書かれています。 坂村先生は、 「なにごとも/本腰にならねば/いい仕事はできない/ 新しい力も/生まれてはこない/本気であれ/本腰であれ」。 一方で相田みつをさんにも「本の字」という詩があって、 「本人本当本物/本心本気本音/本番本腰/本質本性/本覚本願/ 本の字のつくものはいい/本の字でゆこう/ いつでもどこでも/何をやるにも」 とあります。 相田 また、父には別に「本気」という詩もあって、 「なんでもいいからさ/本気でやってごらん/ 本気でやれば/たのしいから/ 本気でやれば/つかれないから/ つかれても/つかれが/さわやかだから」と。 こちらのほうが一般的に知られていますが、 割と柔らかな言い方をするのがうちの父の特徴だと思います。 真民先生の詩は野球のピッチャーで言えば 変に小細工するのではなく、 とにかく直球で剛速球を投げるタイプだと思います。 だからこそ「念ずれば花ひらく」の詩碑が、 いま全国に700か所でしたか? 西澤 父が直接書いたものからつくり、 入魂したものを真言碑といい、 737基あり、それ以後も増え続けています。 相田 凄い数ですよね。 多くの方が詩碑をつくりたいと思うのは、 やはり心にズバッと入ってくる言葉だからだと思うんですね。 しかも決して軽くない、重い球です。 父の場合は「にんげんだもの」に象徴されるように、 人間のいい面も悪い面も全部さらけ出すようなスタイルですので、 確かに心に入りやすいのですが、 それはカーブやドロップみたいな感じで 意外なところからすっと入ってくると。 私の勝手な思い込みですが、そういう気がします。 横田 面白い見方ですね。 せっかくですから、共通点の他に、 お二人から見て坂村真民にあって相田みつをに無いもの、 相田みつをにあって坂村真民に無いものというと、 どんなことが挙げられますか。 相田 そうですね……。 父は『詩国』(坂村真民氏がつくっていた個人詩誌)が送られてくると、 丹念に読ませていただいていました。 それから「今回はここに非常に感動しました」と 感想を書いて真民先生に送るのですが、 そろそろ届いたかなと思う頃にはもう先生からお返事が来ると。 あれには父はいつもびっくりしていました。 どちらかというと父は手紙を推敲して書く タイプなので時間がかかるのですが、 真民先生は電光石火の速さでお返事がくる。 そのレスポンスの速さに感動していました。 おそらく当時の郵便事情を考えると、 届いたその日にお返事を投函されているのではないかと よく言っていました。 西澤 おそらくそうだと思います。 田舎ですから一日に二回しか集めにこなくて、 午前中の集荷時間のギリギリまで書いたものを投函し、 午後はまたギリギリまで書いたものを投函する。 投函しないと落ち着かないんです。 だから住むところはポストが近くないといけないと申しておりました。 横田 お手紙のことで思い出しましたが、 私がまだ高校生の頃に、 おそらく『一遍上人語録』がご縁だったと思いますが、 一読者として坂村先生にお手紙をお送りしたところ、 やはりすぐにお返事をいただきました。 一緒に「念ずれば花ひらく」の色紙も頂戴して、 さらに大学を卒業する頃まで毎月『詩国』を送っていただきました。 私のような無名の学生にも お返事や『詩国』をお送りいただいたことは、 いまも忘れません。 後になってお聞きしましたが、 『詩国』は毎月大変な数を無料でお送りされていたそうですね。 西澤 はい、一遍上人の信仰に随従して行っていたものですが、 1200通が限界と申しておりました。 横田 私などにも自筆の宛名書きで頂戴していましたから、 おそらく1200通全部ご自分で宛名書きをされたのでしょう。 そして封筒に「ふう」っと息を吹き込む。 だから先生の気が籠っているんです。 ほんの数年であってもそれを頂戴する一員の中に 私も入れていただいたことは、 いまにして思うと本当にありがたいことです。 |
2014.03.05 |
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