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トップに立つ者の条件 渡邉一夫(南東北グループ総長) 2008年、民間病院として世界で初めて 最先端のがん治療センターが開設されました。 それが福島県郡山市にある 「南東北がん陽子線治療センター」です。 立ち上げたのは、 南東北グループ総長・渡邉一夫氏。 福島・宮城・青森・東京・神奈川を基盤に、 現在16の病院や診療所などを経営し、 「すべては患者さんのために」を信条に 日本の医療界を改革しようと挑み続けています。 病院を襲った最も大きな事件は 1988年の「ミドリ十字事件」でした。 当時、脳卒中の中でも多かったのが脳梗塞で、 不治の病と言われていました。 私はそれを外科手術で治そうとしたんです。 脳梗塞は頭の中の血管が 詰まってしまう病気ですが、 注射によっていち早く血流を再開させれば 治すことができる。 ただし、その前に脳細胞が生きているかどうかを 見極めなければいけない。 そのためには脳循環、 つまり脳の血液の巡りを測定する 必要があるんです。 ところが、その測定装置は日本になくて、 トモマチックというデンマーク製のものを 輸入していました。 で、その機械を動かすには ゼノンという薬が必要でした。 これはフランスからの輸入品で ミドリ十字が販売していたんです。 トモマチックを動かすためには 一度に100ミリキュリーという大量のゼノンを 使わないと作動しない。 ところが、薬事法では10ミリの使用は 認められていましたけど、 100ミリという量は認可されていなかった。 でも実際には、厚生省のミスだったんです。 輸入の手続きについて不手際があり、 保険に収載するのを忘れただけの話だったんです。 こんな理不尽な話はありませんよ。 自動車は売っていいけど、 ガソリンは売ってはいけない というようなものですからね。 ジェラシー勢力がこの事態に気づいて 「あれは違法だ。訴えられるぞ」と脅してきた。 私は何も悪いことはしていないから 「脅すなら脅せ」と言ったら、 彼らは新聞社にリークしたんです。 福島県の大手二紙が一面で報じました。 それで全国紙やテレビ、雑誌までもが騒ぎ出し、 私が連載していた新聞社も 手のひらを返したように私を叩きました。 ただ、日本に輸入されていたトモマチックは10台あって、 それを使用していた大学病院や民間の大病院も 同じような立場にありましたから、 私だけの問題では済まず、 全国的な問題になってしまったんですね。 それで厚生省も事態を収拾できなくなって、 結局うやむやな形になってしまいました。 ただ、うちの病院は2か月間、 保険医療機関の指定が取り消されました。 他のところは1か月でしたが。 これは病院にとっては死活問題です。 患者さんから10割お金を 取らざるを得ませんからね。 そうなれば患者さんは来ないだろう、 あの病院は潰れるぞ、 という噂が広まっていきました。 ところが、うちの病院の患者さんは 減るどころか、応援してくれたんです。 病院を助けようと「友の会」ができ、 6万人くらいの署名が段ボール箱に集まりました。 患者さんだけじゃありません。 医師や看護師、病院のスタッフも 誰一人辞めることはありませんでした。 それで私は患者さんの負担が増えないように、 後から申請すればお金が戻ってくるようにし、 保険取り消しの障壁を切り抜けました。 やっぱりどんな時でも大将が動揺したり、 ぶれたりしたらダメなんですね。 |
2014.01.16 |
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