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人は一人では生きられません。 誰しも両親をはじめ、縁ある人々の 愛情とまごころによって 今日があるのです。 そのことに気づいた時、 私たちは謙虚に素直に 命を輝かせて生きることができる。 そう論語は教えてくれています。 「之を愛しては、能く労すること勿からんや。 焉に忠にしては、能く誨うること勿からんや」 安岡定子(こども論語塾講師) 私がこの章句を意識するようになったのは、 論語塾を始めて数年経ってからのことです。 当初は子供たちにどうやって分かりやすく伝えるか、 そのことばかりに腐心し、 目の前の子供たちに教えることで精いっぱいでした。 ただ、何年も続けていく中で、 来てくれる子供たちに愛情を抱き、 一人ひとりの成長や将来のことにまで 思いを寄せられるようになったからでしょう。 ある時、『論語』を読み返すと、 この章句が沁み入るように心に響いてきたのです。 「之(これ)を愛しては、 能(よ)く労すること勿(な)からんや。 焉(これ)に忠にしては、 能く誨(おし)うること勿からんや」 (人を愛したならばどうして いたわり励まさないことがあろうか。 人に対してまごころがあるならば どうして教え導かないことがあろうか) 意味だけを取ると「なるほど、そのとおり」と 容易に納得することができます。 しかし、そういう字面だけの理解ではなく、 身を以て実感できた時、この章句が俄然好きになり、 以来、論語塾でよくお話しするようになりました。 この章句は、弟子に対して深い愛情を持っていた孔子の 教育者としての本音がよく表れている言葉だと思います。 ですから、親御さんや学校の先生方が 一緒に参加するクラスでは、 子供たち以上に大人の方たちが 「教える側の気持ちが全部こもっている」 「胸がいっぱいになります」 と、共感されることがたびたびあります。 ところが、当の子供たちは愛される側であって、 まだ章句の本当の意味を実感できる立場にはありません。 そこで子供たちにお話しする時は、 逆の見方から説明するように心掛けています。 例えば、次の質問をします。 「その人が本当に自分のことを思って 言ってくれているのかどうか分かるでしょ?」 すると、子供たちは「分かる、分かる」と口を揃えます。 「じゃあ、何とも思っていない人のことを わざわざ怒ったり、注意したりすると思う?」 と聞くと、 「どうでもいい人には怒ったりしない」 と答えます。 その上で私はこのようにお伝えします。 「ご両親や学校の先生から 『これはやっちゃダメ』 『ああしなさい、こうしなさい』 と言われた時に、うるさいなって 思うことがあるかもしれません。 でも、それは愛情があるから、 真剣に思っているから言うんですよ」 自分がどれだけ愛されているかが分かれば、 子供たちも助言や忠告に対して 素直に耳を傾けることができるのではないでしょうか。 |
2014/04/03 |
「未来を担うリーダーの条件」 數土文夫(東京電力会長) 牛尾治朗(ウシオ電機会長) ※対談のお相手は、経済同友会代表幹事や 日本生産性本部会長などの要職を歴任する ウシオ電機会長・牛尾治朗氏です。 數土 先般のソチオリンピック・パラリンピックでは 日本の若い選手が大変活躍しましたね。 ビジネスにおいてもこれからは、 オリンピックのような国際的ゲームで活躍しようという 意志を持って行動を起こしてきた人でなければ、 リーダーの資格はないと私は思います。 県大会、国体だけで満足しているようではならないと。 牛尾 いまはサッカーの本田圭佑選手や野球の田中将大選手が 海外の名門チームで活躍していますが、 世界レベルで活躍できるスターがいると、 その競技への注目も集まります。 ですから企業も、このグローバルな時代には グローバルなレベルのスターを持つ必要があるんです。 數土 社長は社長なりに、部長は部長なりに、 新入社員は新入社員なりに、 世界を意識して仕事をしていくことが重要です。 そういう環境で自分を育てていく人、 あるいは人を育てていける会社でなければ リーダーシップは取れないでしょうね。 自分の経験に照らして言えば、 40代後半くらいになってきたら、 自分とは全然異なる業界の経営者の仲間に入ったり、 外国の経営者の友達を4、5人持っているくらいでなければなりません。 鈴木大拙や新渡戸稲造、内村鑑三といった人たちは、 若い頃環境に恵まれずに苦労したことを一つのバネに 世界に通用する人物に育っていきました。 だからといって環境がよかったら 人材は育たないかというとそうでもない。 それは本田選手や田中選手を見れば分かることです。 ですから、豊かな中でどうやって健全な競争意識を育んでいくか、 ということがいまの日本の重要な課題だと私は考えます。 數土 こういう中でますます重要になってくるのが人間学だと思います。 以前牛尾さんと、京セラの稲盛和夫さん、セコムの飯田亮さんと 座談会をさせていただいた時には、先輩のお三方から、 最近の経営者はなんともふやけた顔をしているって こっぴどくやられてしまいました(笑)。 牛尾 數土さんはもちろん、 キリッとしたいい顔をなさっているけれどもね(笑)。 數土 いまのリーダーは昔に比べて人間的魅力に乏しく、 人間が小粒になっていく傾向があると言われています。 もしこのような傾向があるとすれば 人間学を学んでいないからだと思います。 そういう人は、いくらスペシャリティーのあることを 言ってもなんとなく軽薄に聞こえて、 相手に安心感や安定感を感じさせられないと私は思います。 牛尾 おっしゃるとおりです。 數土 これだけグローバルに、多種多様な人間と交流する時代には、 トップに立つ人間はますますいろんな人と チームをつくれなければなりません。 そこで必要なのはやはり人間学です。 人材は長所を見てあげることが大事ですが、 それも人間学が身についていないリーダーでは上手くいきませんね。 ITの時代といっていくらスマートフォンで情報収集しても、 人間学というのは身につきません。 やっぱり紙の本と向き合い、体験を重ねながら 時間を掛けて学んでいかなければならないものだと思うんです。 とりわけ古典を読むことが大事ですが、 これがいまのリーダーには不足しています。 牛尾 若い人にはピーター・ドラッカーも薦めたいですね。 彼は日本型経営を非常に支持した人なんですが、 ものを決する際の優先順位というのを説いているんです。 第一に、過去ではなく未来を選ぶ。 第二に、問題ではなく機会に焦点を合わせる。 第三に、横並びではなく独自性を持つ。 第四に、無難で容易なものではなく、変革をもたらすものを選ぶ。 そしてドラッカーは、この4つを選ぶのは 知識や見識や分析力ではなく、 リーダーの勇気だと説いています。 この勇気を日本流に説明すると、 胆識だと私は思います。 數土 メイフラワー号でアメリカに移った人たちは、 自分たちの社会を築いていくために、 一人ひとりが自分の持てるものすべてを供出しました。 そうしてコミュニティーが成り立ってから 一人ひとり平等に権利を分かち合ったわけです。 最初から権利があったわけではないんです。 日本もいま重要な興亡の岐路に立っていますが、 リーダーを目指す人間は権利より義務を 先にしなければいけないと私は思います。 国家に貢献する一流の国民を目指すべきだと思うのです。 |
2014/04/02 |
ノーベル物理学賞受賞者で、 かつて筑波大学学長を務めた 江崎玲於奈氏。 今年89歳を迎えますが、 現在も国内外を飛び回り、 学術振興に尽力する歩みは いささかも留まることを知りません。 そして、驚くべきことにいまなお ノーベル賞候補者なのだといいます。 「ノーベル賞を取るための5か条」 江崎玲於奈(物理学者) ※対談のお相手は、江崎氏と長年親交があり、 遺伝子工学の世界的第一人者の村上和雄氏です。 江崎 振り返りますと、 これまでの88年の人生の中には いろいろなことがございましたが、 その体験を通して言えるのは、 自分で自主的に物事を判断し選択しながら 生きることがいかに大事かということです。 村上 それを先生はオプションと表現されていますね。 江崎 オプションというのは単なる選択ではありません。 選択する自由、つまり自分の意思というのが根底にあるわけです。 特に若い方々には自由な環境でいい選択をしながら 創造的な人生を送っていただきたいと切に願っております。 世の中にはいろいろなオプションがあります。 当たり前ですが、前の都知事のように 悪いオプションは取ってはいけません(笑)。 では何かを行おうとして、 目の前にリスクのあるものと リスクのないものがある場合の選択はどうか。 最近の傾向としてリスクを取らない人が 多いように思いますが、 それが誤りということを私は警告しておきたいと思います。 もちろん、端っから失敗に終わるような オプションは取るべきではない。 しかしそれをやることで自分が成長できるとしたら、 道は厳しくともそのオプションを取っていただきたいし、 私自身のこれまでの仕事を振り返ってみても そうやって生きてきたと思うんです。 村上 その時その時のよき選択があったからこそ、 ノーベル賞受賞などの栄誉に繋がっていったわけですね。 江崎 ただ、よく人生の逆境という言い方をしますがね。 家族の死や病気、戦争など自分の力ではどうしようもない問題は別として、 例えば仕事の上で生きるか死ぬかというような逆境に立たされたとしたら、 オプションが間違っていなかったかどうか、 やはり考えてみるべきでしょうね。 逆境を乗り越えることを美談とおっしゃる方もいますが、 私はそうではないと思う。 逆境は避けるべきであるし、それを予知できなかったとしたら、 それは本人の弱点ではないでしょうか。 研究者もそうですが、あまりに逆境ばかりに 身を置いていたのでは、何も生み出すことはできません。 私の言うリスクを取るということと逆境とは違うんです。 逆境は避けたいが、目の前にある壁をいかに乗り越えるか、 というチャレンジ精神がなくては 充実した人生を送ることはできないと思います。 江崎 創造性を育むにはオプションを活かすこととともに、 何事もよく「考える」ということも大変重要です。 私が勤めていたIBMには、 「Think」という標語があちこちに掲げられていました。 考えて考えて考え抜け、 という社員の心得を説いた言葉です。 アップル社のスティーブ・ジョブスも、 「Think different」、つまりただ考えるだけではなく、 違ったことを考えろ、と言っています。 これを受けて私が若い人に言いたいのは 「Think unthinkable」、考えられないことを考えなさいということですね。 先ほど申し上げたように、 エネルギーが粒子状態になっているという、 想像を絶するアンシンカブルなことをプランクが考え出し、 それが古典力学を超える量子力学の発展に繋がりました。 このように将来というものは 必ずしも過去の延長線上にはない。 現状維持、何もしないこと、伝統を守るということが リスクになることだってある。 そのことをしっかり理解してほしいと思っています。 村上 そういえば、江崎先生には、 ノーベル賞を取るための五か条という 有名な言葉がありますね。 お話を聞きながら、 いまそのことを思い出していました。 江崎 ああ、あれは私が1994年に国際会議で話した内容を、 ノーベル物理学賞の選考委員が聞いて、 スウェーデンの物理学専門雑誌に 「江崎の黄金律」として発表してくれたものです。 一、いままでの行きがかりにとらわれない 二、教えはいくら受けてもいいが、大先生にのめりこまない 三、無用なガラクタ情報に惑わされない 四、創造力を発揮して自分の主張を貫くには闘うことを避けてはならない 五、子供のような飽くなき好奇心と初々しい感性を失ってはいけない この五つは、私自身のモットーであるとともに、 いま私が日本に創造の風土を醸成するための 心得としていることでもありますね。 |
2014/04/01 |
日本球界に燦然と輝く 868本のホームラン世界記録は、 2人の師弟の出会いから始まりました。 荒川博氏、24歳、王貞治氏、14歳。 いまや伝説となった「荒川道場」にて、 両氏が二人三脚で行った特訓とは いかなるものだったのでしょうか。 「プロは絶対にミスをしてはいけない」 王貞治(福岡ソフトバンクホークス球団会長) 荒川博(野球評論家・荒川野球塾塾長) 王 とにかく僕は不器用でしたから、 練習に練習を重ねて覚えるしかなかったんですね。 逆に不器用だったから、 とことんまで練習をやれてよかったと思っています。 荒川 あんまり器用じゃなかったね。 だからよかった。 他のことができなかったのがよかったんだ。 王 反復練習するしかなかったですからね。 荒川 伸びる選手は心掛けが違うんだよ。 大リーグのイチロー選手だって、 午後6時から試合が始まるのに、 昼の2時にはグラウンドへ出ると聞いている。 王 彼とはWBCの第一回大会で一緒になりましたが、 私がチームの選手たちとグラウンド入りすると、 必ず先に来て練習をしていましたね。 やっぱり、人の見ていないところで努力しているんです。 僕は荒川さんから指導を受けた 21歳から30歳までの約10年間、 とにかく荒川さんの言われることは 絶対間違っていないという信念を持って取り組みました。 それがなければ、とてもあの厳しい練習は 続けられなかったと思います。 人に物事を教わるに当たっては、 それが最前提なのだと思いますね。 その荒川さんがコーチを退任された 翌年の昭和46年には、 僕はかつてないスランプに陥りました。 荒川さんがおられた頃は、 悪いところがあるとすぐに直してもらえましたが、 今度は自分で解決策を見つけるしかない。 しかしスランプを抜け出すのもまた、 練習する以外に道はないんです。 試合の中で迷いが出てくるわけですから、 練習してその迷いを取り払うしかありません。 荒川 そうだね、努力以外にはないよ。 だから私はいつも「努力に勝るものなし」って言うんだ。 けれども間違った努力をしていたら、 これはどうしようもないからな。 だからやっぱり「本物から習え」っていうことなんだな。 王 そうですね。 本物から習って、最初はその形をきちっと受け入れ、 ある程度のところから自分のものになって 変化していくわけですね。 王 そういえばホームランを打ち始めた頃、 「王シフト」という守備態勢を 敷かれたこともありました。 打席に入ると、相手チームの野手が 6人も右半分に寄っていたのには驚きましたね。 荒川 左に打たせてフォームを崩させようとしたんだね。 王 そうですね。 けれども僕は、 率を打つことが目標ではなかったですからね。 来た球を強く打って、なおかつスタンドに入れることが 自分本来の打ち方だと思っていましたから。 荒川 物の考え方がそもそも違うんだよ、我々は。 何百人守ったって、球がその上を行きゃいいんだから(笑)。 王 何人守っていようが、真芯で打てば野手の間を抜ける、 角度がつけばスタンドへ行く、ということで、 シフトを敷かれたことはあまり問題ではありませんでしたね。 むしろあのシフトは、 何があっても自分がよりよい打球を打てばいいんだと、 もう一段階、僕の気持ちを高めさせてくれました。 荒川 そうだ、相手は関係ないよ。 王 僕の現役時代には、 一球一球が文字どおりの真剣勝負で、 絶対にミスは許されない、 と思いながら打席に立っていました。 よく「人間だからミスはするもんだよ」と言う人がいますが、 初めからそう思ってやる人は、必ずミスをするんです。 基本的にプロというのは、ミスをしてはいけないんですよ。 プロは自分のことを、人間だなんて思っちゃいけないんです。 100回やっても、1000回やっても絶対俺はちゃんとできる、 という強い気持ちを持って臨んで、初めてプロと言えるんです。 相手もこちらを打ち取ろうとしているわけですから、 最終的に悪い結果が出ることはあります。 でも、やる前からそれを受け入れちゃダメだということですよね。 荒川 初めからミスが許されたら、これはもう、 人間として堕落してしまうよ。 職業によっては、そのミス一つで 破産に至る場合もあるんだから。 王 真剣で斬り合いの勝負をしていた昔の武士が 「時にはミスもある」なんて思っていたら、 自らの命に関わってしまう。 だから彼らは、絶対にそういう思いは 持っていなかったはずです。 時代は違えど、命懸けの勝負をしているかどうかですよ。 |
2014/03/31 |
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