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プロは絶対にミスをしてはいけない 王貞治(福岡ソフトバンクホークス球団会長 荒川博(野球評論家・荒川野球塾塾長) 日本球界に燦然と輝く 868本のホームラン世界記録は、 2人の師弟の出会いから始まりました。 荒川博氏、24歳、王貞治氏、14歳。 王 とにかく僕は不器用でしたから、 練習に練習を重ねて覚えるしかなかったんですね。 逆に不器用だったから、 とことんまで練習をやれてよかったと思っています。 荒川 あんまり器用じゃなかったね。 だからよかった。 他のことができなかったのがよかったんだ。 王 反復練習するしかなかったですからね。 荒川 伸びる選手は心掛けが違うんだよ。 大リーグのイチロー選手だって、 午後6時から試合が始まるのに、 昼の2時にはグラウンドへ出ると聞いている。 王 彼とはWBCの第一回大会で一緒になりましたが、 私がチームの選手たちとグラウンド入りすると、 必ず先に来て練習をしていましたね。 やっぱり、人の見ていないところで努力しているんです。 僕は荒川さんから指導を受けた 21歳から30歳までの約10年間、 とにかく荒川さんの言われることは 絶対間違っていないという信念を持って取り組みました。 それがなければ、とてもあの厳しい練習は 続けられなかったと思います。 人に物事を教わるに当たっては、 それが最前提なのだと思いますね。 その荒川さんがコーチを退任された 翌年の昭和46年には、 僕はかつてないスランプに陥りました。 荒川さんがおられた頃は、 悪いところがあるとすぐに直してもらえましたが、 今度は自分で解決策を見つけるしかない。 しかしスランプを抜け出すのもまた、 練習する以外に道はないんです。 試合の中で迷いが出てくるわけですから、 練習してその迷いを取り払うしかありません。 荒川 そうだね、努力以外にはないよ。 だから私はいつも「努力に勝るものなし」って言うんだ。 けれども間違った努力をしていたら、 これはどうしようもないからな。 だからやっぱり「本物から習え」っていうことなんだな。 王 そうですね。 本物から習って、最初はその形をきちっと受け入れ、 ある程度のところから自分のものになって 変化していくわけですね。 王 そういえばホームランを打ち始めた頃、 「王シフト」という守備態勢を 敷かれたこともありました。 打席に入ると、相手チームの野手が 6人も右半分に寄っていたのには驚きましたね。 荒川 左に打たせてフォームを崩させようとしたんだね。 王 そうですね。 けれども僕は、 率を打つことが目標ではなかったですからね。 来た球を強く打って、なおかつスタンドに入れることが 自分本来の打ち方だと思っていましたから。 荒川 物の考え方がそもそも違うんだよ、我々は。 何百人守ったって、球がその上を行きゃいいんだから(笑)。 王 何人守っていようが、真芯で打てば野手の間を抜ける、 角度がつけばスタンドへ行く、ということで、 シフトを敷かれたことはあまり問題ではありませんでしたね。 むしろあのシフトは、 何があっても自分がよりよい打球を打てばいいんだと、 もう一段階、僕の気持ちを高めさせてくれました。 荒川 そうだ、相手は関係ないよ。 王 僕の現役時代には、 一球一球が文字どおりの真剣勝負で、 絶対にミスは許されない、 と思いながら打席に立っていました。 よく「人間だからミスはするもんだよ」と言う人がいますが、 初めからそう思ってやる人は、必ずミスをするんです。 基本的にプロというのは、ミスをしてはいけないんですよ。 プロは自分のことを、人間だなんて思っちゃいけないんです。 100回やっても、1000回やっても絶対俺はちゃんとできる、 という強い気持ちを持って臨んで、初めてプロと言えるんです。 相手もこちらを打ち取ろうとしているわけですから、 最終的に悪い結果が出ることはあります。 でも、やる前からそれを受け入れちゃダメだということですよね。 荒川 初めからミスが許されたら、これはもう、 人間として堕落してしまうよ。 職業によっては、そのミス一つで 破産に至る場合もあるんだから。 王 真剣で斬り合いの勝負をしていた昔の武士が 「時にはミスもある」なんて思っていたら、 自らの命に関わってしまう。 だから彼らは、絶対にそういう思いは 持っていなかったはずです。 時代は違えど、命懸けの勝負をしているかどうかですよ。 |
2014.03.31 |
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