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喜びの種をまく 中條孝徳(アサヒビール名誉顧問) 仏法に「無財の七施」という教えがあります。 財産が無くても 誰でも7つの施しができる、 喜びの種をまくことができる という教えです。 其のうちの三つ 筆者が中学生の頃、 菩提寺の和尚さんが 『易経』の「積善之家必有余慶」の 因果応報を分かりやすく、 「幸せになりたかったら 他人様にどんどん喜びの種をまきなさい」 と説いた。 ひどい貧乏で真面目な男が 「和尚さん、そうしたいが お金が一文もありません」と。 これに答えて 「おまえさんの了見違い(考え違い)も甚だしい。 おまえさんには素晴らしい笑顔があるではないか」 と反論。 彼は一念発起、やがて上京し、 笑顔に徹して立派な商人になった。 筆者長じて学んでみれば 『雑宝藏経』に 「仏説きたもうに七種施あり。 財物を損せずして大果報を得ん」 とあるではないか。 1、眼施(げんせ) ――やさしいまなざし 昔から「目は口ほどに物を言う」 と言われてきた。 眼施一つで恋実り、 そのおかげで多くの若者が 幸せを掴んできた。 天下の切れ者、 石破茂自民党幹事長のまなざしは異様。 眼施に気づけば鬼に金棒、天下が取れる。 2、和顔悦色施(わがんえつじきせ) ――慈愛に溢れた笑顔で人に接する 道元禅師はやさしくほほえんで 赤ちゃんにかける言葉を「愛語」と称され、 「慈念衆生、猶如赤子のおもいをたくわえて 言語するは愛語なり。(中略) 怨敵を降伏し、君子を和睦ならしむること、 愛語を根本とするなり。 むかいて愛語をきくは、 おもてをよろこばしめ、こころをたのしくす。 むかわずして愛語をきくは、 肝に銘じ、魂に銘ず。 しるべし、愛語は愛心よりおこる、 愛心は慈心を種子とせり。 愛語よく廻天のちからあることを学すべきなり、 ただ能を賞するのみにあらず」(『正法眼蔵』) と説く。 安岡正篤師もまた 「斉家の箴」で五か条を挙げ、 最初に 「和顔愛語を旨とし、 怒罵相辱かしむるをなさず」 と説く。 3、言辞施(げんじせ) ――言葉には廻天の力あり 「ありがとうおかあさん ありがとうおかあさん おかあさんがいるかぎり ぼくは生きていくのです 脳性マヒを生きていく やさしさこそが大切で 悲しさこそが美しい そんな人の生き方を 教えてくれたおかあさん おかあさん あなたがそこにいるかぎり」 の詩には、どれほど涙を流したか分からない。 脳性マヒの子供が 悲しみ悩む母親に「喜びの種」をまいたのだ。 今上陛下のご指南もされた碩学・小泉信三氏が、 戦死したご子息の信吉大尉へ宛てた 手紙の一節を紹介しよう。 「我々両親は、君に満足し、 君をわが子にすることを 何よりの誇りとしている。 僕は若し生まれ替わって妻を選べといわれたら、 幾度でも君のお母様を選ぶ。 同様に、若しもわが子を選ぶということが出来るものなら、 我々二人は必ず君を選ぶ」 それほどまでに自分を考えてくれる 両親の愛情を確と受け止め、 信吉大尉は前線に赴き、 お国のために散っていった。 |
2013.12.26 |
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