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プロは絶対にミスをしてはいけない 王貞治(福岡ソフトバンクホークス取締役会長) 868本――。 王貞治氏が打ち立てた通算本塁打の世界記録は、 30年以上経ったいまなお、破られるどころか、 脅かす存在すら出てきていません。 燦然と輝く大記録を成し遂げさせたものは 何だったのか。 王 そういえばホームランを打ち始めた頃、 「王シフト」という守備態勢を 敷かれたこともありました。 打席に入ると、相手チームの野手が 6人も右半分に寄っていたのには驚きましたね。 荒川 左に打たせてフォームを崩させようとしたんだね。 王 そうですね。 けれども僕は、 率を打つことが目標ではなかったですからね。 来た球を強く打って、なおかつスタンドに入れることが 自分本来の打ち方だと思っていましたから。 荒川 物の考え方がそもそも違うんだよ、我々は。 何百人守ったって、球がその上を行きゃいいんだから(笑)。 王 何人守っていようが、真芯で打てば野手の間を抜ける、 角度がつけばスタンドへ行く、ということで、 シフトを敷かれたことはあまり問題ではありませんでしたね。 むしろあのシフトは、 何があっても自分がよりよい打球を打てばいいんだと、 もう一段階、僕の気持ちを高めさせてくれました。 荒川 そうだ、相手は関係ないよ。 王 僕の現役時代には、 一球一球が文字どおりの真剣勝負で、 絶対にミスは許されない、 と思いながら打席に立っていました。 よく「人間だからミスはするもんだよ」と言う人がいますが、 初めからそう思ってやる人は、必ずミスをするんです。 基本的にプロというのは、ミスをしてはいけないんですよ。 プロは自分のことを、人間だなんて思っちゃいけないんです。 100回やっても、1000回やっても絶対俺はちゃんとできる、 という強い気持ちを持って臨んで、初めてプロと言えるんです。 相手もこちらを打ち取ろうとしているわけですから、 最終的に悪い結果が出ることはあります。 でも、やる前からそれを受け入れちゃダメだということですよね。 荒川 初めからミスが許されたら、これはもう、 人間として堕落してしまうよ。 職業によっては、そのミス一つで 破産に至る場合もあるんだから。 王 真剣で斬り合いの勝負をしていた昔の武士が 「時にはミスもある」なんて思っていたら、 自らの命に関わってしまう。 だから彼らは、絶対にそういう思いは 持っていなかったはずです。 時代は違えど、命懸けの勝負をしているかどうかですよ。 |
2015.03.12 |
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