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努力の仕方の差 奥村幸治(NPO法人ベースボールスピリッツ理事長) 言わずと知れた天才打者・イチロー選手。 「シーズン歴代最多安打記録262」 「10年連続シーズン200安打」 「日米通算4000安打」等々、 前人未到の大記録を打ち立て、世界中のファンを魅了してやみません。 なぜイチロー選手は、かくも輝かしい成績を挙げ続けているのか。 これは私が打撃投手に区切りをつけ、トレーナーになろうと メンタルトレーニングの勉強をしていた時のことだった。 イチロー選手をつかまえて、メンタルトレーニングについて どのように考えているかと尋ねてみた。 すると彼はひと言、 「メンタルを鍛える、つまり心を鍛えるっていうのは、 自分に必要なことを続ける努力をすることじゃないんですか」 と答えた。 私はその答えに興味を覚え、さらに質問を続けた。 「これまでに、これだけは絶対誰にも負けていないと 胸を張って言える努力って何?」と。 「高校の時に寮に入っていた3年間、 僕は寝る前の10分間素振りをしていました。 そしてそれを1年365日、3年間欠かさず続けました。 それが僕の誰にも負けないと思える努力です」 この話を聞きながら、私は高校時代に 自分がどんな努力をしてきただろうかと自らに問い掛けた。 「きょうは家に帰ったら300回素振りをしよう」 「きょうはいつもより多く走ってこよう」 といった努力はしてきたが、イチロー選手のように これだけは絶対にやらなければという思いで 続けてきたことは何もなかったことに気づかされた。 この話には後日談がある。 つい最近のことだが、私の講演を聞いてくれていた イチロー選手の高校時代の先輩に声を掛けられ、 その講演で触れた「10分間の素振り」について話題が及んだ。 「やっぱり本当なんですか」と尋ねると、 その答えに私は驚いた。 「10分間の素振りね、あれは最低10分だからね。 やり続けると1時間でも2時間でもやっていましたよ」。 イチロー選手は既に高校生の頃には 一度自分で決めたことを、決してゼロにはしなかった。 そうやって心を鍛えてきた事実に 私は新たな衝撃を受けた思いだった。 NHKの特集番組でイチロー選手は 次のような趣旨のことを語っている。 「心が折れそうになった時、自分が続けてきたことを やめてしまおうと思ったこともあった。 しかし、もし仮にやめてしまったら 自分が自分ではなくなってしまう」 これは彼にとって、いまの自分があるのは、 やると決めたことを休むことなく続けてきたからだという 認識を強く持っているからに他ならない。 彼の弛まぬ努力の仕方そのものが心の支えとなり、 いまを生きる力になっているのだと私は思う。 |
2015.02.05 |
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