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最高の状態を創り出すために 鈴木秀子(国際コミュニオン学会名誉会長) プロテニスプレーヤーの錦織圭選手が 大躍進を遂げています。 世界のトップ8が集結する 「ATPワールドツアーファイナルズ」に 史上初、アジア人として出場し、準決勝進出。 決勝の舞台には僅かに及びませんでしたが、 多くの日本人がその姿に勇気を得たでしょう。 その錦織選手が準決勝進出を決めた試合中、 解説を務めた松岡修造さんが 次のような言葉を発していました。 「もう打てば何でも入る。 スーパーゾーンに入りましたよ!」 このゾーンは「究極の集中状態」と訳され、ひとたびゾーンに入ると、 能力を超えた最高のパフォーマンスを 発揮することができるといいます。 しばしばアスリートの間で使われる表現ですが、私たちは仕事や人生の中で いかにすればゾーンに入り、 最高の状態を創り出すことができるのか――。 最近、『フローゴルフへの道』(ジオ・ヴァリアンテ著、白石豊訳) という本を読み、とても印象に残りました。 ここで言う「フロー」とは「ゾーン」とも呼ばれ、 能力を120%発揮させる究極の集中状態であり、 ひと度フロー状態に入ると、 人は自分が自分でないような最高のパフォーマンスを 発揮することができると書かれています。 ただこのフロー状態というのは、 自分の意思で簡単に入ることはできず、 平素から努力をしている人、 日々真摯に自分の仕事に打ち込んでいる最中に、 フッと向こうから訪れてくれる時があるといいます。 その上で本書には、フロー状態に入るための 具体的な努力の方法についても記してあります。 それは、自分の能力よりも少し高いことに 真剣にチャレンジすることだといいます。 ゴルファーには、 簡単にフローに入れる人と、 なかなか入れない人がいるそうです。 フローになかなか入れない人は、 自分の成績を表す数字や、 周囲のギャラリーの目ばかり気にしているそうです。 しかしフローに入れる人は、 そうした他者の評価ではなく、 自分を信じて、自分にできることに ベストを尽くそうとします。 無心に打ち込むからこそフローに入り、 それによって自分の限界を 少しでも超えるプレーができれば、 大きな喜びに繋がるのです。 詩人の山村暮鳥は神を信じて牧師になり、 一所懸命、真剣に生きた人でした。 しかし真剣に生きれば生きるほど、 神の前にある自分の弱さにいたたまれなくなります。 自分の作品が様々な批判を浴び、 なかなか受け入れられない中、 余計な計らいを捨てて創作に打ち込むうちに、 遂には自分自身であり続ければいい という境地に達したのです。 それはある意味、フロー状態に入った ゴルファーにも通ずる境地であったともいえます。 私たちは、他人の評価や結果というものにとらわれ、 傷ついたり落ち込んだりしてしまうことがしばしばあります。 しかし人間の生きる本質は そういうところにはありません。 弱く、至らない自分でも受け入れ、 生かされていることにまず気づくこと。 そのことに感謝しながら ひたすら自分の仕事に打ち込んでいくこと。 その小さなことの積み重ねによって よい人生を築き上げていくことができるのです。 |
2014.11.16 |
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