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一流に触れなさい そうすれば本物が分かるようになる 中澤宗幸(ヴァイオリンドクター) 一挺数億円もの価値があるという ストラディヴァリウスやガルネリなど、 世界中の名器を修復するヴァイオリンドクター・中澤宗幸さん。 東日本大震災の流木を生かした「津波ヴァイオリン」の 製作者でもあり、その音色は天皇皇后両陛下をはじめ、 数多くの被災した人たちの心に届き、勇気づけています。 村上 中澤さんは比較的若い時に外国に修業に出られたそうですが、 その話も少ししていただけますか。 中澤 私は高校を出ると、これといった目的もないまま 神戸の大学に進学しました。 でも、自由な少年時代を過ごした私にとって 大学の講義は窮屈で、退学したんですね。 しばらくは父の仕事を手伝ったり 街をさまようような生活を続け、 そういう時に楽器店の求人の張り紙を目にして 店員として雇っていただくようになりました。 ある時、たまたま修理のために店を訪れたイギリス人と親しくなって、 彼からいろいろなヴァイオリンの話を聞くうちに、 自分も一度でいいから本場のストラディヴァリウスを見てみたい、 触れてみたいと夢を膨らませるようになりました。 それで1967年、27歳の時にロンドンに行きました。 村上 40年以上前ですから、1ドル360円の時代です。 外国に行くのは大変ではありませんでしたか。 中澤 それは大変でしたが、 知り合いの宣教師が渡航を手伝ってくれたんですね。 私は英語ができたわけでもないし、 知り合いがいたわけでもありません。 ただヴァイオリンの世界を覗いてみたい一心でしたね。 私の最初の目的は世界中の名画や名器などをオークションにかける内覧会で ストラディヴァリウスを見ることでした。 それでガラスケースに入った実物を見た時は さすがに身震いを止められませんでした。 どのくらい時間が経ったか分からないくらい、 何時間もずっと眺めていたんです。 村上 本物を見たい一心でイギリスまで行かれたわけだから、 感激も一入だったでしょう。 中澤 それにしても縁とは実に面白いと思うんですが、 ストラディヴァリウスを眺めていた私にたまたま声を掛けてくれ、 意気投合した男性がいたんです。 それが現地のヴァイオリンのディーラーでした。 彼は「泊まるところもないなら、しばらく自分の家に泊まってよい」 と親切にしてくれ、 彼の紹介でオックスフォードのヴァイオリン製作者のもとで 仕事を手伝うようになりました。 それから私は16年以上、 ヨーロッパでヴァイオリンの作り方や修復の方法を 本格的に学ぶことになるわけです。 村上 師に就いて修業をされたのですか。 中澤 はい。私は出逢うすべての人を師として学びました。 でも、本当の師に会ったのは帰国した後、 ストラディヴァリウスが自分の手元に来た時です。 ある方から修理を依頼されたのですが、 これほど美しく完成されたものはないわけですから一番の師匠です。 「とにかく一流のものに触れなさい。 一流と二流を見比べるのではなく、 一流ばかり見続けていれば、本物が分かるようになる」 というのが父の教えでしたが、 確かに技術的なものは見て盗む以外にありません。 私は物言わぬ本当の師匠から 何をどのように盗もうかと必死でした。 |
2014.06.23 |
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