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13年踏まれて咲いた雑草の花 谷口英規(上武大学硬式野球部監督) 大学野球の頂点を決める全日本大学野球選手権大会。 昨年、同大会で優勝の栄冠を手にしたのは 群馬県にある上武大学でした。 東京六大学や東都大学、関西リーグなど スター選手を揃える強豪を押さえ、上武大学を初めての優勝に導いた 2013年6月16日、我われ上武大学野球部は 全日本大学野球選手権大会で初めて優勝の栄冠を手にしました。 大学野球日本一――。 それは監督の私にとり遙か遠くの存在でした。 大学野球の強豪は言うまでもなく、 東京六大学や東都大学であり、 群馬県にある我われのような地方大学に スター選手はほとんど集まりません。 そんな中で、なぜ大学野球の頂点に立つことができたのか。 私自身、指導者として足りない部分が多くありますが、 すべてはご縁に導かれてきたというのがいまの心境です。 指導者への憧れは現役時代から抱いていました。 そのためには選手として結果を残さなければと思い、 28歳まで現役でプレー。 浦和学院高校のエースとして甲子園ベスト4、 その後東洋大学、東芝と名門に進み、 1993年アジア選手権の日本代表にも選出されました。 そんな私が上武大学野球部の監督に就いたのは 2000年、30歳の時。 大学時代の恩師、高橋昭雄監督から 声を掛けていただいたのがきっかけでした。 着任早々、私は衝撃的な光景を目にしました。 選手たちはバイクに2人乗りでグラウンドに現れ、 身なりは茶髪にロン毛、練習後はタバコを吸いまくる。 ギャンブルに明け暮れたり、 喧嘩で警察のお世話になったりと、 スクールウォーズさながらの状態だったのです。 最初はとにかく選手たちを捕まえては練習させる。 その繰り返しでした。 当時私は現役を引退して2年足らず。 当然大学生のレベルとは圧倒的な差があります。 そこで私は、実力を見せつけることで、 彼らの目をこちらに向かせようと考えました。 「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、 褒めてやらねば、人は動かじ」 という山本五十六の有名な言葉がありますが、 まずは「やってみせる」ことから始めていきました。 するとどうでしょう。 当初私は2、3年かけて 勝負できるチームをつくろうと思っていたのですが、 彼らに「どうしたい?」と聞くと 「リーグ優勝して神宮に行きたい」 と言ったのです。 やんちゃで負けず嫌いな性格ゆえに、 心の奥底に熱いものを秘めていたのだと思います。 とはいえ、いまの状態では到底 優勝などできるはずがありません。 そこからまさに全力投球、毎晩11時過ぎまで 厳しい練習に打ち込む日々が続きました。 そしてこの年、見事リーグ優勝を果たし、 神宮への切符を手にしたのです。 全国大会は2回戦敗退に終わったものの、 その日の慰労会の席で、引退する4年生全員が正座をし、 「監督、夢が叶いました。 本当にありがとうございました!」 と、頭を下げたのです。 それまでの苦労がすべて報われた瞬間でした。 そして、私は選手たちにこう約束しました。 「10年後、おまえらが上武大学野球部OBです、と 胸を張って言えるようにするからな」 これが私の監督としての原点であり、 本当の意味でスタート地点に立った時だと思います。 |
2014.05.07 |
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