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水深8千メートルへの軌跡 杉野行雄(杉野ゴム化学工業所社長) 昨年末、世界の深海探査に 新たな道が拓かれました。 水深8千メートルの海域に無人深海探査機を送り込み、 世界で初めて3Dハイビジョンビデオカメラで深海魚などの撮影に成功したのです。 東京・下町の町工場が手を携え、国産部品だけでつくられたその探査機の名は「江戸っ子1号」。 7年越しで夢を成功へと導いた 村上 いろいろとご苦労をされたと思いますが、 杉野社長がこの事業を続けてこられた原動力は 何だったのでしょうか。 杉野 やはり夢ですかね。 そして夢を実現させたいという熱い思いがなければ こうした開発はとてもできません。 なんせ町工場の親父たちをまとめていくことだけでも 実際大変でしたから(笑)。 村上 どうやってまとめていかれたのですか。 杉野 みんな我が強くて、 一度こうだと言い出したことは簡単には曲げません。 ですから「あなたは素晴らしい」とおだてたり、 なだめすかしたりしながら、 こちらの言うことも聞いてもらうと。 でもこれだけの大所帯になっても崩れることなく成功した一番の要因は プロジェクトメンバーの皆さんが同じ目的に向かって、 真面目に努力を惜しまず続けてくれたということですね。 個々の力だけでは実現できないことを、 いろいろな技術が寄り合わさって大きな力になる。 ですから、いまいるメンバーの誰か一人でも 欠けていたら成功していなかったと思います。 村上 開発も研究も同じようなもので、 いまは特に技術の進歩が激しいですから一人ではダメで、 どういったチームワークを創り上げていくかが大事ですね。 ですから人のマネジメントというか、 どうやって仲間に喜んで働いてもらうかが一番大切ですよ。 その点、杉野社長の思いとか情熱というものが 根本にあったから成功したんだと思いますけどね。 杉野 いやいや、私だけではなくて、みんなの思いですよ。 私が嬉しかったのは大学の学生さんたちが 非常に興味を持って取り組んでくれたことですね。 喧々諤々やっているうちに、 理論に走りがちだった学生さんの物の見方が 変わってきたんですよ。 それから物事というのは、 やる気を出して真剣になればどんどん進むのだ ということを感じ取ってくれて、 ボランティアにもかかわらず 深夜まで一所懸命頑張ってくれたこともありました。 村上 やりがいを感じたんですね。 杉野 物づくりの楽しさ、意義を 見出してくれたんだと思います。 残念ながらいまは大手企業が失敗を怖がって 新しい物に挑戦しなくなってしまいました。 そしてその煽りを受けて町工場の人間まで上から指示のある、 間違いのない物だけつくればいいという風潮になりつつあります。 もちろん上から何かを頼まれて部品をつくる際には力を発揮するのですが、 自分から何かを企画してやろうという力がどんどん弱まっているんですよ。 戦後の物づくりの活力は挑戦して 新しい物を生み出すところにあったのが、 そういったいい面がみんな削ぎ落とされて、 日本の物づくりは下手をすると崩壊しかねないような 状態まで追い込まれていると私は思っています。 今回の成功で、町工場も自分たちの技術を活用して 新たな分野を開拓できるという可能性を示すことができたし、 一つの指針になると思うんですよ。 誰もが無謀だと思うことにも、 敢えて挑戦しようとこれから全国各地で狼煙が上がれば、 日本の物づくりも復活の余地はあると私は思います。 |
2014/04/23 |
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