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日本一へと導いたハインリッヒの逆法則 阿部由晴(常盤木学園高校サッカー部監督) これまでなでしこジャパンに 最も多くの選手を輩出してきた高校、それは宮城県にある 常盤木学園高等学校サッカー部です。 1995年、部員僅か5人からスタートし、 全国大会最多優勝を誇るまでにチームを導いた 阿部 私が女子チームを率いていく上で 大切にしてきたことの一つに、 「ハインリッヒの逆法則」というものがあります。 ――何ですか、それは? 阿部 これは保健の教科書に載っていた 「ハインリッヒの法則」を自分なりにアレンジしたものなんです。 アメリカの損害保険会社に勤めていたハインリッヒという人が、 ある工場で発生した5千件余りの労働災害についてその原因を調べた。 すると、一件の重大な労働災害が起こる背景には 29件のヒヤッとする軽い事故がある。 さらにその背後には300もの小さなミスがあったと。 こう書いてあったんです。 最初にこれを見た時は「ふーん、そうなんだ」 くらいにしか思っていなかったんです。 でも、ちょっと待てよ、 これを逆にしたらどうなるんだと。 高校女子選手権で優勝する、これが一つの大きな目標だとしたら、 29の小さな目標を達成すればいい。 その29の目標を達成するためには、 300の細かい、小さなことをきちんと積み重ねていけばいいんじゃないか。 300の項目を書き出して、それを徹底していきました。 ――例えばどんなことを? 阿部 挨拶をする、食事の時にいただきますと言う、 喧嘩をしない、隠し事をしない、嘘をつかない、 そういう普段の生活の細かいことやサッカーの約束事がほとんどかな。 やっぱり毎日の積み重ねって大事ですよね。 そうすることで心が整えられていく。 野球のイチロー選手が 「僕が高校時代にやってきたことは 寝る前に10分間、素振りをしたこと」 と言ったのを聞いて、 私はすげえなって思いました。 実際にバットを持って、 寝る前に10分間振れるか、振れないですよ。 それを手抜きをせず、365日やっている。 これがイチロー選手のすごさなんでしょうね。 これと同様に、300の当たり前のことを 確実に積み重ねていくことが非常に大事だと思います。 ――監督自身が手ごたえを感じ始めたのはいつ頃ですか。 阿部 それは日本一という結果が残せてからですよ。 ああ、これがよかったんだなって。 その当時は分からなかった。 でも、これが正しいだろうと思って、信じて一所懸命やってきた。 整理し、反省してみて初めて、 これはよかったと確信を持てるようになりました。 2014.05.14 少子化が進み厳しい学校運営を強いられる中、 飛躍的に志願者数を増やし続けている 金沢星稜大学と品川女子学院。 それぞれ学校改革の中心を担い、 目覚ましい成果をもたらしている 「“自己肯定感”を高める2つのポイント」 堀口英則(金沢星稜大学進路支援センター長) 漆紫穂子(品川女子学院校長) 堀口 私が金沢星稜大学に赴任した当時、 学生たちにアンケートを取って驚いたことがあります。 専門業者が行っている入学後の学力や性格テストの全国比較で、 うちの学生は全国の同年代の大学生と比べて、 「自己卑下(コンプレックス)」や「劣等感」の感情が5倍も強かったのです。 そういう状況ですから、 赴任した年の7月の時点で4年生の7割が未内定でした。 漆 ああ、そんなに……。 堀口 学生に「どうして君は就活しないの?」と聞くと、 「別にいいんです、どうせダメだし……」と、最初から諦めている。 8月頃にも企業から求人票が来ていて、 中には“掘り出し物”のような求人も来るんです。 「チャンスだよ、受けるだけ受けてみたら?」と勧めても 「俺なんか無理ですよ」と。 漆 そこからどう導いていかれたのですか。 堀口 「どんなバッターだって打席に立たなければまぐれ当たりもないんだ。 1回でも2回でも多く打席に立つこと。 君は銀行向きだから大丈夫だ!」 と褒めまくりです(笑)。 それでどうにか重い腰を上げて動き出しました。 遡って金沢星稜大学の過去の就職実績を調べてみると、 当時は経済学部のみの単科大学なのに 銀行や信用金庫などの金融機関はゼロで、ほとんどが中小企業。 そもそも大手や金融機関、まして公務員なんて 最初から無理だと思って受けない学生が圧倒的でした。 だから私は「企業を選ぶな」と言い続けました。 規模はもちろん、業態や業種、職種、給料、休日などの条件も含め、 企業側から「内定! 来てね」と内定をもらってから初めて 学生は自分の進路を選ぶことができるようになります。 それから自分にとって最善の進路を考えればいいわけで、 その前に「自分探し」などするんじゃないと。 だから、まずは「打席数を増やせ」、 同時に「空振りを防いで打率を上げる訓練をせよ」というわけです。 漆 実は私も「自己肯定感」をテーマにしてきました。 というのも、 「子供の未来のために何をすればいいか、 これだけはというものを教えてください」 と親御さんから聞かれることがあるんですね。 30年この仕事をやってきて、 これだけはというと、自己肯定感を高めることだなと思ったんです。 堀口 いやぁ、それは本当に大事だと思いますね。 漆 自己肯定感の対義語は被害者意識ではないかと思うのですが、 まず自分を認め、自分に共感する力がある。 すると相手の気持ちも分かるし、認めることができる。 ひと言で言うと「自分が好き、人も好き」 ということではないかと思うんです。 そういう子は面倒見がいいので、人にも好かれて、 なんとなくいつも周りに人が集まってくる。 自慢話も嫌味にならないで、みんなを楽しませて、 結果的に周囲にも貢献できる。 そういう人に育つと自分も幸せで周りの人も幸せなのかなと。 で、私の周りの大人で自己肯定感の高い人に 「どういう親御さんでしたか」と聞くと、 共通点が2つありました。 堀口 どんなことですか。 漆 例えば、よその人に何と言われても 「それならそれでいいです」という感じで、 「とにかく私はあなたの味方」 「何があっても私はあなたを愛している」 というメッセージを送り続けているんですね。 その時、「こういうことをしたら嫌いになるわよ」と 条件づけをするとダメなんです。 行動は叱ってもいいのですが、 存在は無条件に肯定する。 無条件の受容です。 もう一つは、子供がチャレンジする時に 「どうせ無理よ」とか言わないこと。 「やってみれば」とチャレンジさせてあげて、 できた時に褒めてあげる。 無条件の受容と、やればできるという自信を持たせてあげる。 この2つが自己肯定感の高い子を育てます。 |
2014.05.12 |
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