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苦難こそ成長の糧 多田野弘(株式会社タダノ名誉顧問) 建設用クレーンや高所作業車などの製造販売を行う 株式会社タダノ。 戦後の焼け跡から家族と共に会社を立ち上げ、現在、従業員数3000人以上、 売上高1800億円を超える大企業へと発展させたのが 名誉顧問の多田野弘さん、94歳 94歳の私の朝は4時半に始まります。 2キロ半のウオーキングでひと汗かくと、 プールで24メートル泳いで会社に出ます。 プールの水は、冬になると肌を刺すように冷たくなり、 雪が降るのを眺めながら泳ぐ日もあります。 正月には海で泳ぐのが恒例ですが、 風邪をひいたことは一度もありません。 泳ぎ終えた後の爽快感はこの上もなく、 また冷たさに克つことで大きな自信と喜びを得られるため、 この40年1日も欠かさず続けてまいりました。 私は戦後の焼け跡から父と弟と3人で 多田野鉄工所(現・タダノ)を立ち上げました。 40歳の時、会社が大証二部上場を果たしたのを機に 父から経営を託されましたが、 自分には特に秀でた能力もありません。 何とか社長に相応しい人間に 自分を仕立てなければと試行錯誤を重ねていた折、 冷水の効用を教えてくださったのが、 地元香川の金子正則県知事でした。 当時、私は東京で仕事があると、 夜行で上京して廉価な県の施設に宿泊し、 早朝の入浴で気持ちを切り替えてから出かけていました。 金子知事とは浴場でしばしば一緒になり、 冷たい水を張った一人用の浴槽に浸かっておられる姿を よく見かけていました。 不思議に思い、 ある時理由を尋ねてみると、 「多田野君、知事というのは 仕事の9割は嫌な話を聞くことなんだよ。 冷たい水も苦にせず入れる自分になれば、 嫌な話もニコニコと快く聞いてあげられるようになるのだ」 とおっしゃったのです。 その話に一念発起したのが、 冷水で泳ぐようになったきっかけでした。 こうしたささやかな心掛けも含め、 社長に相応しい自分をつくるべく 懸命に努力を重ねてきた体験から、 苦難こそは成長の糧という思いを強くしています。 社長時代の苦難といえば、 いくら人や設備を増やしても思うように増産を果たせず、 お客様からのご注文に十分対応しきれない時期がありました。 打開策を模索する中、たまたま書店で手に取った ドラッカーの『現代の経営』に、 利益は社会に対する貢献度に応じて与えられるものであるとあり、 目から鱗が落ちる思いがしました。 利益を目的に経営すれば、 会社に関わる従業員も顧客もそのための手段となりますが、 そんな企業が繁栄するわけがありません。 しかし企業経営の目的を社会貢献とすれば、 これは人として目指すべき生き方にも通じてくる――。 これでいこう、これで経営に失敗しても悔いはない。 ドラッカーの経営哲学に惚れ込んだ私は、 「創造・奉仕・協力」を社是に掲げて 会社の意識改革に取り組みました。 これが会社の風土として 浸透してきたことを実感できたのは、 献血を通じてでした。 献血というのは心身ともに健全で、 奉仕の精神に富んでいなければ実践できません。 会社で呼び掛けてみたところ、 最初から2割もの社員が参加してくれました。 その数は年々増えて4割にも達し、 総理大臣賞を受賞するまでに至りました。 経営の問題に直面したおかげでドラッカーの哲学と出合い、 そしてよい社風を築き上げることができました。 貴重な体験を通じて、私は苦難こそは成長の糧である と確信を深めたのでした。 |
2014.07.07 |
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