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お子様を隣の空席に 里岡 美津奈(人材育成コンサルタント) 全日空で24年間客室乗務員を務め天皇皇后両陛下や国賓などの トップViPをおもてなししてきた里岡美津奈さん。 国内線のチーフパーサーを 務めていた入社6、7年目の時、 あるフライトで出逢ったお客様のことは いまも忘れられません。 離陸の際、チーフパーサーは 全CAから安全の確認をもらって、 それをキャプテンに伝える。 そうすると、キャプテンが管制塔に 離陸準備完了の合図を出し、 管制塔から許可が下りると 離陸できるんですね。 だから、滑走路に着くまでに キャプテンにオッケーを出すことが、 チーフパーサーとしての 離陸前の重要な使命なんです。 ところが、あるフライトで 一人のCAから全然 オッケーが来ませんでした。 外を見たらもうすぐ滑走路に着くし、 キャプテンからも インターホンで催促されるので、 そのCAのもとに行ったんですよ。 そうしたら、ある夫婦連れの女性のお客様が お人形と一緒にベルトをしているので オッケーが出せませんと。 何度説明しても聞き入れてくれないと言うので、 どういうふうに説明したのか聞いたら、 「緊急の際に危険ですので、 お人形は隣に置いてベルトをしてください」と。 私は事の顛末を聞き、 お客様の様子を拝見した上で、 こう話し掛けました。 「お客様、本日はご搭乗ありがとうございます。 間もなく離陸いたしますので、 お子様を隣の空席に座らせて、 ベルトをしてもいいですか」と。 そうしたら、その女性は 「ああ、いいですよ」と言って、 普通にそのお人形を隣に置いてベルトをして、 ご自身もベルトをしてくれたんです。 大人の女性がお人形を手放さないというのは 異様ですよね。 何かよほどの事情があるんだなってことは 誰が見ても分かると思います。 で、そのCAと私の違いは 「お人形」と言ったか 「お子様」と言ったかです。 |
2017.10.11 |
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