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生きる目的 鈴木 秀子(国際コミュニオン学会名誉会長) 戦時中、南洋の国で 多くのイギリス人兵士が 日本軍の捕虜となりました。 敗戦の色が濃くなると、 日本軍はイギリス兵捕虜を 次々に殺害していきます。 そういう時、 一人の捕虜がポケットから 一枚の写真を取り出して、 さりげなく捕虜収容所の看守に見せました。 幼い子供が写った写真でした。 「我が家は貧しい。 子供たちのためにも、 私はここでいま死ぬわけには いかないんです……」 小声ながらイギリス兵にとって 精いっぱいの訴えだったのでしょうが、 この言葉は看守である 日本兵の心に響きました。 看守にも同じ年頃の子供がいたのです。 敵兵の笑顔に、 同じ父親としての素顔を見た看守は、 そっと扉を開けてその兵士を イギリス艦隊がいるほうに逃すのです。 お互いに命懸けの冒険でした。 程なくして上陸したイギリス軍によって 多くの日本兵が殺される中、 看守の男性は英語ができたために 通訳として生き延び、 無事日本に帰国しました。 国を裏切ったという自責の念から 男性を救ったのは、 死をも覚悟で我が子の写真を見せてくれた イギリス兵の屈託のない笑顔でした。 母国イギリスで 幸せに生きる家族の姿を思い浮かべる時、 男性の心は満たされたと言います。 そして、時を経て 二人は涙の再会を果たすのです。 |
2017.10.09 |
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