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おかげさま 森 正光(石上神宮宮司) 村上 和雄(筑波大学名誉教授) 奈良県天理市に佇む日本最古の神社の一つ、石上(いそのかみ)神宮。 宮司の森正光さんと村上先生のお話からは、 日本の歴史の懐の深さがじんわりと伝わってきます。 【村上】 そもそも日本人の精神の中に、 神話の世界が生きていると私は思います。 例えば、「おかげさま」 という言葉がありますが、 これは外国語には訳せない。 「おかげさまで」と言うと、 外国人は「何のおかげですか?」 と聞いてくるんですよ。 でも我われにしてみれば、 神様でもご先祖様でも、 自分を少し越えたような存在を 感じていればそれでいいんです。 「おかげ」というのは影なんですね。 表じゃない。これは陰と陽の世界 にも通ずる話であって、 現れた現象の後ろにあるものに対して、 我われ日本人は「おかげさま」と言う。 それから「もったいない」 という言葉も訳せないんですよ。 単に「節約する」という 意味ではなくて、 その物をつくってくれた人への 感謝の念が表されている。 こういった日本の精神的伝統というのは、 それこそ何千年と続いてきているわけで、 そう簡単には消えるもので はないと私は思っています。 【森】 人間、目に見えるもの ばかりじゃなくて、 見えないものもやはり 大切にしてほしいですね。 よく言われているじゃないですか、 「いまの世の中は心を 大切にする時代だ」 って。確かにそうかもしれませんが、 私は物も大切にすべきだと思うんです。 というのも、いまは何でも 使い捨てになってしまいましたが、 物を大切に扱う姿勢というのは、 そのまま先生がおっしゃるように、 「おかげさま」「もったいない」の 精神にも通じますからね。 心を大切にするとは、 本当はそういったことだと思うんです。 |
2017.09.19 |
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