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天から一本の糸 工藤 良(田川ふれ愛義塾理事長) 14歳で暴走族の最年少メンバーになると、 21歳で逮捕されるまで様々な罪を犯してきたという工藤さん。 いまでは地元福岡で更生保護施設を運営し、 数多くの子供たちを独り立ちできるよう指導しています。 そんな工藤さんの転機となった『蜘蛛の糸』を想わせる 21歳の頃のあるエピソード。 少年院に入った時は、「このままじゃいけん」と思いつつも、 自分の中の見栄が勝って更生できなかったんですけど、この時は違いました。 留置場に入ってすぐに、生まれて初めて罪の重さを自覚し、 反省という感情が生まれたのが自分でも不思議でした。 そして、それまで自分に手を差し伸べてくれた先生や警察、 母の顔が次々と浮かんできたんです。 これが何だったのかいまでも分かりませんが、 その時留置場の小窓からパアッと眩い光が 差し込んできて、声が聞こえてきました。 「あんたが真面目になったとしても、 あんたが道をつけた人たちは被害者として残っていくんや」 自分が更生しようとしている間にも、私が悪さを教え、 暴力団と繋いだ仲間は悪の道に進み続けている。それを教えられたんです。 いままでまともに仏壇にも手を合わせたことのない人間でしたが、 正座してその光に合掌し、「もう一度だけ、チャンスが与えられるのであれば、 自分だけでなく自分が悪の道に引き込んだ仲間を、 何年かかっても必ず元のレールに戻します」と誓っていました。 ──神秘的な体験でしたね。 数日後に離婚届を持って面会に来た妻に、 この体験や天に誓ったことをすべて話したところ、 離婚を思い留まってくれました。 この時、昔教わった芥川龍之介の『蜘蛛の糸』の話を鮮明に思い返し、 主人公のカンダタと同じように、天から一本の糸をもらったように感じたんですね。 |
2018.04.09 |
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