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心で感じる本物の食を求めて 目黒浩敬(アルフィオーレ オーナーシェフ) 杜の都・仙台のはずれ、市街を見渡せる広瀬川沿いの高台にある、 僅か20坪、13席の小さなイタリアンレストラン 「アルフィオーレ」。 仙台一予約の取れない店と言われ、 全国各地から美食家たちが何度も訪れるといいます。 私は料理学校に通ったこともなければ、 特定の師匠のもとで修業を積んだ経験もありません。 にもかかわらず、私がオーナーシェフを務める イタリアンレストラン「アルフィオーレ」は、 仙台一予約の取れない店と言われるまでになりました。 杜の都・仙台のはずれ、市街を見渡せる広瀬川沿いの高台にある、 僅か20坪、13席の小さなレストラン。 このようなところに全国各地から 足を運んでくださるお客様がいることに、 ただただ感謝しかありません。 自然の摂理に則した材料を使い、安全で美味しく、 季節感のある料理を召し上がっていただき、 お客様に最高の満足をお届けしたい――。 2005年、26歳で店をオープンした時から 抱き続けてきたのはこの一念でした。 当店にはアラカルトメニューが一切ありません。 完全予約制で1日最大3組まで。 一人ひとりのお客様とお話ししながら、 好みの食材や調理法を聴き出していくのが私のスタイルです。 年間約100種類に及ぶ自家栽培の野菜やハーブ、 天然酵母100%の自家製のパンや無添加生ハム、 チーズ、手打ちパスタ等々……。 店の食材のほとんどが手づくりであるため、 日によって使えるものは様々。 ゆえに、お客様の好みとその日の食材とを照らし合わせ、 そこから最善の料理をつくり上げていくのです。 そもそも私が料理人を志したのは 大学生の時でした。 当初は英語教師を目指していましたが、 抱いていた理想と教育現場の現実とのギャップに幻滅し、断念。 「何になりたいんだろう」と 葛藤する日々が続きました。 料理好きな親のもとに生まれ育ったからでしょう。 私は小学生の頃からラザーニャやティラミスといった 本格的なイタリア料理をよくつくっていました。 家族や友人が「美味しい」と言って喜んで食べてくれる。 そのことが私自身の何よりの喜びだったのです。 「よし、料理人になろう」 そう心に決めました。 目的が定まった以上、 大学にこのまま通い続ける意味はありません。 すぐさま中退し、働き口を求めて上京。 この時私は一つの誓いを立てました。 「将来必ず独立して成功する。 それまで親とは一切会わない」 それが大学まで行かせてくれた親に対する せめてもの償いであり、恩返しだと感じたのです。 いくつかのイタリアンレストランを転々とした後、 24歳の時に単身イタリアへと渡りました。 もちろんイタリア語は全く分かりませんし、 お金もコネもありません。 頼れるのは己の身一つでした。 まず、ホテルのフロントマンに英語で話し掛け、 「ここで働かせてください」という意味の イタリア語を紙に書いてもらう。 それを握りしめ、 ひたすら飛び込み営業を行いました。 どこの馬の骨とも分からない異国の若者が ある日突然訪ねてくるわけですから、 無理もありません。ほとんどの店で断られました。 それでも当時は夢に燃えていたからでしょう。 決して怯むことなく、 後先考えず果敢に突っ込んでいきました。 そうして1年半かけてイタリア全州を回り、 5か所のお店で働かせてもらうことができたのです。 その中で、私が最も感銘を受けたのは 「自分たちの地域の文化や伝統に誇りを持っている」ということでした。 どこの地方に行ってもイタリア料理店が立ち並び、 どのお店にも同じ郷土料理のメニューが置かれている。 そして、お互いに味を競い合っている。 その姿を見た時に、イタリアンの神髄とは その土地が生む旬の食材を誇りを持って料理することだと学びました。 そして帰国後、この考え方をもとに、 東北の豊かな食材を使ったイタリアンレストランとして 「アルフィオーレ」をオープンさせたのです。 |
2014.09.01 |
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