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求める心が古典を活かす 藤井實(エスケー化研社長) 建築仕上塗材の分野で国内シェアナンバーワンを誇り、 アジア市場でも存在感を示すエスケー化研。 創業期から約60年にわたり その陣頭指揮をとり続けるのが、 藤井實社長、81歳です。 ――若くして経営者になられた当時、 ご苦労はありましたか。 20代の頃はがむしゃらでしたから、 悩むようなことはなかったのですが、 30歳を過ぎたあたりから悩み出しました。 人間というものは、 前に向かって進もうとしたら悩むものですよ。 ――というのは? 創業8年目に社名を四国化研工業に改称し、 工場を建設するなど建築用塗料メーカーとして 本格的に歩み始めました。 そうなると仕事で交流する人の幅が広がって、 立派な経営者の方々とお話ししていると、 自分の未熟さというのが透けて見えるわけです。 社員の数が増えていく中、 経営というものを考えた時に果たして いまの自分でいいのかという思いが芽生えてきました。 ――それでどうされましたか。 最初は悩みを払拭したい一心で、 京都のお寺を訪ねて坐禅をやってみました。 お坊さんに随分喝を入れていただきましたが、 その時のご縁で中国の古典に親しむようになったんです。 求める心が強かったので、そのうちに『論語』をはじめ 『孟子』『韓非子』『易経』など、 時間を見つけては何度も読み返しました。 数千年という年月を経て語り継がれてきた学問に触れていく中で、 経営についての悩みは徐々に解消されていきましたね。 ――例えばどんな言葉が琴線に触れたのでしょうか。 『易経』にある六十四卦の中に 「地天泰(ちてんたい)」という言葉があるでしょう。 これは地は人民、天は君子、泰は安らぎを表しているのですが、 僕はなぜ「地」が「天」の上にあるのか疑問に思ったんです。 普通ならば「天」が上にくるはずだと。 この三文字が意味するのは、 君子が人民を押し戴くことで安らぎが訪れることだと分かると、 なるほどこれは面白いなと感じたわけです。 会社に置き換えてみると、 社員を大事にせなあかんということでしょう。 当時、会社を組織化して表向きはメーカーとしてやっていましたが、 実際は何から何まで決めるのは全部自分一人。 社員のことをちゃんと考えたことは ほとんどありませんでした。 これでは将来大をなすのはとても無理だと。 全国的に規模を拡大していくには、 社員と志を一つにしていく必要性を感じたのです。 そこで創業十周年を機に、経営理念や社是、社訓を 打ち出すとともに待遇面でも改善を図りました。 ――具体的にはどのような? 当時の幹部には本当の意味で 経営の仲間になってもらわないかんと考えて、 私が100%保有していた持ち株の一部を 彼らに特別賞与として出しました。 もっとも、当時は私の真意を理解できずに、 もてあましている幹部もいたようですけどね(笑)。 一般社員には決算後の6月に 特別利益配分を支給することにしました。 年間の利益を削ってでも 社員に還元しようと決めたのです。 我が社では夏期と冬期の賞与に加えて 6月にも特別賞与がある。 これは創業10周年の時から、 今日までずっと続けてきました。 会社の基盤を固めるには、 社員に喜びがあることが不可欠だと考えたのです。 ――「地天泰」の三文字を経営に活かされたわけですね。 古典というものは求める心があって読むから、 それを現実に活かすことができるのだと 私はずっと思ってきましたからね。 もう一つ『易経』の言葉で挙げるとすれば 「山天大畜(さんてんたいちく)」。 これは天に山の如く聳え立つには、 大いなる蓄積をしなければいかんという意味で、 そのためには人材はもちろん、技術力や商品力、信用などを しっかりと積み上げていく必要があると。 特に経営においては、手元にお金がなければ、 ここぞというところで手が打てないので、 早い段階から無借金経営を標榜してきました。 他にも安岡正篤先生の「六中観(りくちゅうかん)」の一つに 「腹中書あり」とあるように 古典の教えを胸の内に常に留めてきたことが、 自分自身をつくり上げることにも 繋がったのではないかと思いますね。 |
2014.08.14 |
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