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お客様から教えられた自社製品の強み 藤井隆太(龍角散社長) 「ゴホン! といえば龍角散」の キャッチコピーで知られる医薬品メーカー・龍角散。 江戸時代中期に発祥し、200年以上の歴史を持つ老舗企業です。 ところが、いまから約20年前には、40億円もの負債を抱えていました。 田中 それにしても龍角散さんが 40億円の負債を抱えていたとは 思いも寄りませんでした。 何しろ「ゴホン! といえば龍角散」の キャッチコピーは日本全国に知れ渡っていましたからね。 藤井 確かに全日本CM大賞をいただいたりして、 ブランドの知名度は高かったと思います。 だからといって売り上げがよいわけではないんですよ。 実際、売り上げはどんどん落ちていましたし、 私が帰ってくる前にいろいろと 新製品も発売したようですけど、悉く失敗です。 で、いよいよ万策尽きたという時に 私が引き継ぐことになったんですね。 父は病気だし、業績は悪いし、 新製品の売り上げは伸びない。 ところが、それよりも、 もっと深刻だったのは社員に危機感がない。 これが一番性質が悪い。 私が「会社危ないよ」って言っても 「何がですか?」という感じですよ。 田中 他人事だったわけですね。 藤井 社員に経営数字を明らかに していなかったこともあるかもしれません。 けど、知っていた社員も 「これだけ知名度もあるし、歴史もあるし、何とかなるだろう」 「昔よかったからそのまま行けるだろう」 と慢心していたんです。 私は社長になる時、初めて経営数字を見せてもらったんですが、 その瞬間、どうやって他人様に迷惑をかけないで、 会社を清算することができるか、 正直言ってこればっかり考えていました。 田中 それほど深刻な状態だった。 藤井 これはまいったなと思いました。 ただ、私は10年間、営業やマーケティングをやってきましたので、 いかに優れた製品やサービスであっても、 世の中の流れについていけなければ自滅してしまう ということは分かっていました。 例えば、いまの活動的なビジネスマンには 匙に取って服用する龍角散は使いにくいだろうなと。 田中 どんなことから着手されたのですか。 藤井 確かに会社の売り上げは伸び悩んでいました。 だけど、まだゼロではない。 最低限売れていることは売れている。 これはなぜだろうかと。 そこでまずは徹底的に分析しようと考えたんです。 アンケートや店頭でのヒアリング、街頭インタビューなどを行い、 どういうブランドイメージなのか、 会社や製品に対して何を期待しているのかを聞き出していきました。 私は「こんな化石のような時代錯誤の会社はいずれなくなる」 と言われると思っていました。 ところが、面白いことに答えはそうじゃなかったんですね。 田中 ユーザーは何と? 藤井 「長年一つのことを守っているのは大したもんだ。 新しいことができなくても専門性があるからいいじゃないか」と。 それから驚いたのは看板商品の龍角散。 こんな時勢に合わない物を、 いまどき誰が買うかと思って調べたら、 これもすごいんですよ。 女性のグループインタビューをしていたら、 「妊娠中、産婦人科の先生から 喉の調子が悪くなった時は龍角散を買うように勧められた」と。 ハッと気がついて調べてみたら、 相談室の問い合わせのトップが 産婦人科の先生と妊婦の方でした。 後になって知ったのですが、 龍角散は喉の粘膜に直接作用する生薬で 一般的な薬のように血中に入らないため、 胎児への副作用も極めて少ないんですね。 あっ、そんな効能があったのかと。 これはまだまだやっていけると思いました。 自社製品の強みをもっと認識して、 そこを強化するべきだと、 その時初めて気づくことができたんです。 田中 ユーザーから製品の強みを教えられたと。 藤井 当時はまだいくつかの製品ブランドを展開していたんですが、 経営資源を龍角散ブランドに集中させ、 新商品開発や広告戦略を仕掛けていきました。 それによって、回復の兆しが見えてきたんです。 |
2014.08.27 |
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