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一語履歴WORD vol.198c

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一語履歴 vol.198
視座を高める 198a小泉八雲 198b孔子が求めた 198cこれは素人の論文
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分かれ道 197a一流と二流の差 197b視座を高めて 197c積み重ね
一語履歴 vol.196
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一語履歴 vol.195
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一語履歴 vol.194
不便さ 194a成長する時 194b目の輝き 194cマツダの快進撃
一語履歴 vol.193
立ち直り 193a歴史の遺訓 193b向上心 193c腑に落ちた知識
一語履歴 vol.192
明治生まれ 192a誠意を尽くした 192bプロの仕事 192c時間の創造主
一語履歴 vol.191
乗り越えられる 191a最善の努力 191b最大の逆境 191c鬼の口
これは素人の論文
               占部 賢志(中村学園教授)

ロンドン大学の教授で有名な森嶋道夫氏の非武装中立論。
これをばっさりと一刀両断したのが、21歳の女性の投稿記事でした。

【占部】
ロンドン大学の教授で
著名な森嶋通夫氏が
『文藝春秋』誌上で持論の
非武装中立論を展開したことがあります。

国際的に知られた人物の主張でしたから、
反響も大きかったのですが、
反論として見事だったのは、
次号の投稿欄に載った21歳の
女性読者が綴った読後感でした。

このことを私が知ったのは、
評論家の福田恆存氏
が取り上げたからです。

あの福田さんが
感心したほどの一文でした。

【教師B】
森嶋氏の非武装中立論というのは、
具体的にはどんな考え方なんですか。

【占部】
当時は冷戦下でしたから、
我が国にとっていちばんの
脅威はソ連でした。

森嶋氏はそのソ連が万一にも攻めてきたら、

「秩序ある威厳に満ちた降伏」
をすべきだと述べ、

「ソ連の支配下でも、私たちさえ
 しっかりしていれば、日本に
 適合した社会主義的経済を
 建設することは可能である」
と説いたのです。

【PTA役員A】
侵略されたら降伏するのが
いちばんというわけですか。

典型的な非武装中立論ですね。

【占部】
で、このロンドン大学教授を
向こうにまわして、
彼女はこう切り返したのです。

「“私たちさえしっかりしていれば”
 という一項によって、
 これは素人の論文に終わった。

 私たちはしっかりしていない、
 もしくは私たちはいかなる時にも
 しっかりしているとは限らない……

 それが軍備ゼロで、降伏してから後、
 個々人が尊厳をもって
 生きていけるだけの社会体制を
 新たに築いていけるのか、
 私には不安だ。

 支配側の体制にいち早く順応して、
 そちらに頭角をあらわす人々は
 どんどん出るに違いない」

【教師B】
すごい洞察力ですね。
21歳とはとても思えません。

【占部】
森嶋論文の誤りを人間洞察を欠いた
「素人の論文」と一刀両断したのですよ。

【教師A】
どうしたら、これほどの
眼力を持てるのでしょうか。

【占部】この女性には、
自分というものが見えているのです。
 
2016.04.29

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