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不便さをセンスよく磨き上げる 金井 辰巳(花仙庵 仙仁温泉 岩の湯社長) 世の中の流れとは真逆の発想で人気を博す温泉宿が長野県にあります。 不足、不便、不揃い この3つをセンスよく磨き上げることで宿泊客の心を鷲づかみにする 館内の環境づくり、 演出には随分心を配っています。 当旅館ならではの 洞窟風呂はその代表ですが、 他にも例えば、廊下の一部は それまであった壁や ガラス張りの部分を取り外し、 外の自然と融合できる空間にしました。 暖房の効いた廊下の 先にある自動ドアが開くと、 そこには屋根と廊下しかない 豊かな雪景色が広がり、 その空間を抜けて 次の自動ドアを進むと、 再び暖かい廊下が待っている というイメージです。 紅葉のシーズンですと、 枯れ葉が舞い落ちます。 それを踏んで自然の感触を 味わっていただく、 遠くの絶景ではなく身近な環境です。 このような廊下を随所に作ったのは、 現代人が便利さや 快適さを追求する一方で、 忘れてしまっているものが あるように思ったからです。 私たちは不足、不便、不揃い という不の部分にこそ、 便利さに慣れた現代人の心の奥底にある 潜在ニーズがあると考え、 それらを最高に生かすことを とても大事にしています。 つまり、ただ不をそのままに するのではなく、それらを センスよく磨き上げる。 ──不便さを磨き上げる? ええ。例えば、外の廊下には 厚みのある本物の原石を敷き詰め、 その下には温泉の管を引いて融雪し、 お客様が滑らないよう安全にしています。 外庭は動きを持たせるために 山の沢水を引いて水の音色を 楽しんでいただけるようにしました。 ソフト面では、例えば冬の 真っ白な雪のシーズンでも、 昔ながらのどてらを アレンジしたオリジナルの 防寒着を準備して、いつでも暖かく お部屋から外に出るのが楽しくなるよう 工夫させていただいています。 |
2016.03.19 |
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