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最善の努力をする 平澤 興 六〇六回失敗する 根気とおろかさと愛情 能力でありますが、 偉大な発見というものは、 素晴らしい頭と同時に、 素晴らしいおろかさを 兼ね備えておらんと できないものであります。 それはこの前、ちょっと申しましたが、 サルバルサン六〇六号という化学療法を 発見しました パウル・エールリヒは、 六〇六回薬をつくり直すという 根気さとおろかさ、しかし六〇六種の薬を 考え出そうという頭の力がありました。 大事なのは頭の力と根気の強さです。 私に頭の力は仮にないにしても、 それなら六〇六回やり直す おろかさと根気があるかと申しますと、 残念ながらはっきりとあると 答えられんのであります。 それほどの経験を持っておりませんから 答えられませんが、 まあなかなか六〇六回失敗をするごとに むしろ勇気を出して六〇六回 新しい薬をつくった。 それもいい加減につくるのではありません。 頭の中で考え抜いた結果 つくるのであります。 しかもそのひとつの薬には そのたびごとに 容易ならん動物実験が ついておるのであります。 ですから六〇六回薬をつくったと いうだけでなくて、 それをさらに実行している人が あるのであります。 そういう苦労がされておる。 六〇六回も新しい薬を考え出す能力、 脳の力。 この頭の力、あるいは俗に言うよい頭と、 しかもおろかさとを兼ね備えておってこそ 初めて六〇六号ができたのであります。 現在の、抗生物質の大半は みなそうであります。 五千種、六千種、一万何千種なんていう 世界中の土地から土を集めて、 それから先は学問的な知恵が いるのであります。 そういうふうな最新の精密な研究の 工程の一部分は 文字通りめくらめっぽうであります。 世界中のものを集めて、 その土をベースにすることによって、 その中にペニシリンとか アウレオマイシンとか、 現在使われている抗生物質が あるのであります。 現在の抗生物質の研究法を見ますと、 そういうふうなおろかさの極地と賢さの 極地とが結び合っているのでありますが、 同時にそこには学者の最善の努力が あるのであります。 頭だけがよくても駄目だし、 根気だけがよくても駄目であります。 頭と根気とそれに最善の努力、 もうひとつ仕事に対する愛情、 あるいは研究に対する愛情が、 偉大なる発見につながるということが いえるのではないでしょうか。 とにかくいずれにしても ハチマキ姿の努力は 最善の努力とは言いかねるものが 多いのであります。 長い視野をもって、環境の条件とか、 自分の条件とかを見極めて、 しかも目的を明らかにした最善の努力、 そしてそれとともに目的に対する愛情が あるのだろうと私は思います。 どうかみなさん、抗生物質を よくお飲みになると思いますが、 その後ろにはそれだけの学者の努力が あるということを忘れないでください。 |
2016.02.27 |
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