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もう懲りた 稲盛和夫 宇宙の真理を解くことは大変に難しい ことだろうとは思いますが、 難しいことを難しく理解して、 この難しい人生を歩くことほど また難しいものはなかろうかと思います。 私は難しければ難しいほど単純に理解し、 ただ一点、真理を見出し、それを守ることによって 人生は全うできると思うのです。 私は化学の技術屋ですから、 難しい学問はしておりません。 ずっとセラミックの研究一筋できましたから、 こういう哲学的、文学的な本を たくさん読んだわけではありません。 しかし、安岡先生の本を読ませていただいて、 私は自分がどういう運命を持って 生まれてきたかは知りませんが、 ただ一点だけ、善きことを行うことによって、 私の運命がいい方向に行くで あろうということを学びました。 世のため人のために 尽くそうなどという、 大上段に振りかぶったようなことをいう人があると、 インテリであればあるほど それをせせら笑う人が多いようです。 しかし、世のため人のために 尽くそう ということぐらい立派なことはありません。 私たちそれぞれが生まれてきた 人生の目的は、 世のため人のために尽くすことです。 一燈照隅といいますが、どんな人でも 素晴らしい役割を持って生まれてきたわけです。 その役割を通じて、世のため人のために 尽くすことが大事なことなのです。 世のため人のために尽くそうとすることによって、 自分の運命を変えていくことができると思います。 同時に自分だけよければいい、という利己の心を離れて、 他人の幸せを願うという利他の心になる。 そうすれば自分の人生が豊かになり、幸運に恵まれる、 ということを仏教では説いているのです。 天台宗の山田恵諦座主に生前何度かお目にかかって お話をさせていただく機会がありました。 ある時、「忘己利他」という言葉を 教えていただいたことがあります。 私はこれを「もう懲りた」と読むようにしています。 そして自分だけよければいいという考えには、 もう懲りたというように思ってきました。 |
2019.01.07 |
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