本文へスキップ

      次代に輝く住まいを創る

TEL. 0246-65-2311

〒979-0154 福島県いわき市沼部町鹿野43

一語履歴WORD vol.323

過去の一語履歴を見ることが出来ます。

一語履歴 HOME
⇦前 一語履歴 次⇨ 
一語履歴 vol.330
学問の目的 330a運がいい... 330b何のために 330cまず夢を
一語履歴 vol.329
素読は 329a一言一涙 329b誰にも負けない 329cお坊さんの後ろ姿
一語履歴 vol.328
棒切れ 328aお客さんに 328bもう懲りた 328c言志四録
一語履歴 vol.327
いましかない 327aおはよう 327b目の前 327c人として
一語履歴 vol.326
心の師となれ 326a大器晩成 326bへこたれるものか 326c作曲家の意図
一語履歴 vol.325
商品開発 325a共に学ぶ 325b大切な良薬 325c無常観
一語履歴 vol.324
成長できない 324aJALの奇跡 324b快GOツアー 324c叱って
一語履歴 vol.323
先人の知恵 323a人も運も 323b三鏡 323c恒久平和を 323dそばに居る
一語履歴 vol.322
自分の思い 322a喧嘩だけはするな 322b才幹に優先 322c言葉には意味
一語履歴 vol.321
韓非子 321a脳の動きが 321b読書が人を 321c先賢の箴言
先人の知恵
       童門 冬二(作家)

熊沢蕃山(くまざわばんざん)といえば、
陽明学者の中江藤樹に師事し、
江戸前期の名君といわれた岡山藩主池田光政の
藩政改革を補佐した人物として知られています。

熊沢蕃山は、江戸時代の実学者として知られている。

「かれは陽明学者だった」
という説もあるが、必ずしもそうではないらしい。
かれは、朱子学にも造詣が深かった。

朱子学と陽明学の長所を混合した学説を
立てていたとみてもいいのではなかろうか。

蕃山は名君といわれた備前岡山藩の藩主
池田光政に仕えて、藩政を指導した。

蕃山の唱える学説は「心学」と呼ばれたが、
徳川幕府首脳部は警戒していた。

「心学は、社会の秩序を乱す危険性がある」

とみていたのである。そのため、蕃山はやがて致仕し、
領内の知行地に隠居した。知行地を“蕃山(しげやま)村”と
地名変更し、ここで農業指導をした。

後に、備中松山(現在の岡山県高梁市)の、
農民出身の家老だった山田方谷がすすめた屯田制度は、
この蕃山の流れを引くものだ。

熊沢蕃山は農業指導だけではなく、
土木建設工事の知識や技術も持っていた。
かれが築いた岡山港の堤は有名だ。

この堤防について面白い話がある。

明治になってから日本の築港技術者として
有名なのが服部長七だ。

広島県の宇品港をはじめ、岡山港、神戸港、
佐渡港などの新造や、改修工事の指揮を執った。

変わった男で、それぞれの港でのエピソードがある。

宇品港の築港を命ぜられた時は、
毎日船を出して釣りをしていた。
仕事を頼んだ知事が怒った。

「釣りばかりしていないで、早く仕事をしろ」

すると服部はこういい返した。

「伊達に釣りをしているわけではありません。
 わたしは毎日魚を釣るのではなくワラジを
 釣っているのです。つまり、毎日ワラジが
 釣れるということは、海の底の流れが穏やかで、
 ここなら港を造っても大丈夫だ
 という地点を探しているのです」

知事はいい返す言葉を失ったという。
佐渡港を造る時は、

「おれの技術は、水の神と風の神からの直伝だ」
とうそぶいた。また神戸港を造る時は、

「毎日、海辺に立って何をしているのだ?」
と人にきかれ、

「波と相談しているのだ」
と答えたという。そんな服部長七が、

「これは参った!」

と降参したのが、岡山港だった。
岡山港は、既に江戸時代から堤が築かれていた。
改修を命ぜられた服部長七は、くまなく古い堤をみて歩いた。
しきりに首をひねった。同行していた役人が、

「何をそんなに感心しているのだ?」

ときくと、

「この古い堤は、理論的にも技術的にも、
 現在の技術をはるかに超えている。
 一体、誰が造ったのですか?」

ときいた。役人は即答ができなかった。
役所に戻って調べてみると、
熊沢蕃山が造ったものだと分かった。
そこで服部長七に、

「あの堤は熊沢蕃山という人が造ったのだ」

と告げた。長七は感動して、

「ぜひ、その熊沢さんに会わせてくれ。
 もっと話をききたい」

といった。役人は弱った。
何百年も前に死んでいると告げると、
長七はさらに目をみはった。

「そんな昔の人が、よくあんな堤を造った。これは驚いた」

自信家だったかれが、初めて先人の知恵と
技術に降参したという話が残っている。
熊沢蕃山は、そういうように学問を後輩に教えるだけでなく、
実際に工事面でも優れた知識と技術を持っていた。
 
2018.12.06

バナースペース

櫛田建設株式会社

〒979-0154
福島県いわき市沼部町鹿野43
Mail infous@kushida-web.com
TEL 0246-65-2311
FAX 0246-65-2313
定休日:土曜日・日曜日