過去の一語履歴を見ることが出来ます。
逆の振る舞い 羽生 善治 (永世七冠) 私はきょうまで将棋を続けてきて、 一つのことに対して十年、二十年、三十年と同じ姿勢で、 同じ情熱を傾け続けられるのが才能だと実感しています。 それでも、長い間やっているとどうしても浮き沈みっていうのはあるんですね。 例えば、朝起きてきょうはちょっとしんどいなとか。 瞬間的なものなら無理してでもできるでしょうけど、 本当の長い歳月となると、どうしても上り下り、バラツキが出てしまう。 ですから、あまり前のことを振り返らないでやっていくことが、 長く続けていく上では大切なことなのかなとは思っています。 棋士としてのあり方という点では、いまでも印象に残っているのが、 亡くなった米長邦雄先生です。 私が初めて名人戦に臨んだ時の相手が、 前年に四十九歳で名人位に就かれた米長先生でしてね。 あの時の先生は、対局中に一回も膝を崩されなかったり、 並々ならぬ思いを込めて臨んでおられました。 勝負は、私が三連勝して名人位に王手をかけたんですが、 そこから先生が盛り返されて二連敗を喫してしまいました。 後で知ったんですけど、米長先生は私に三連敗した後、 負けたら引退するつもりで第四局に臨まれていたらしいんです。 ところが先生は、対局の合間の休憩時間などには、 立ち会いの内藤國雄先生と朗らかに談笑をなさったりして、 そういう覚悟は微塵も感じさせなかった。 並々ならぬ決意を持って勝負に臨みつつも、 そういう逆の振る舞いをあえてなさっていた姿が、非常に印象に残っています。 米長先生の世代の方とは、タイトル戦を戦う機会が少なかったので、 とても貴重な勉強をさせていただきました。 |
2018.02.15 |
〒979-0154
福島県いわき市沼部町鹿野43
Mail infous@kushida-web.com
TEL 0246-65-2311
FAX 0246-65-2313
定休日:土曜日・日曜日