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悲しみの底で気づいた感謝の心 鈴木秀子(国際コミュニオン学会名誉会長) 最近、ワシントンでアメリカ人などを 対象に講演する機会がありましたが、 とても印象に残るアメリカ人女性の 体験発表がありました。 その女性のご主人は地位のある学者で、 経済的にも恵まれ、二人の子供は 有名大学に進学するなど、 一家は何不自由ない幸せな生活を送っていました。 私もこの家族を以前から知っていました。 ところが、ご主人はある時病に倒れて亡くなり、 さらにその一週間後、娘さんがバイクに乗って 外出したまま、行方不明になってしまったのです。 バイクはすぐに見つかったのですが、 娘さんは約6か月後、近くの公園で 遺体となって発見されました。 それから3年間、女性は身が擦り切れるほどの 苦しみを味わい続け、思うところがあって今回、 私の講演会に参加しました。 この講演会は私が話すだけでなく、 参加者が体験を語り、皆で分かち合う という趣旨のものでした。 女性は自身の辛い体験を話した後、 このように続けたのです。 「いま振り返ると、私がいかに傲慢であったかが、 よく分かります。夫が健在な時、 こういう場に足を運んでもシスター鈴木の 言葉は全く受け付けなかったでしょう。 しかし、いまシスターや参加者お一人おひとりの 体験を聴きながら、心から共感している自分がいます。 平凡に思える毎日にいかに 感謝すべきかもよく分かります。 そうなれたのは辛い時期があったからこそ。 あの時期は人に共感を持てる自分に 成長させてくれる本当に ありがたい出来事だったのです」 一緒の場にいた人たちもレベルこそ違え、 様々な苦悩を背負いながら生きています。 それだけに彼女の発言に心から共感し、 魂が共鳴している様子が手に取るように分かりました。 自分に与えられた苦しみや欠点を静かに受け入れ、 そこに愛と感謝を感じ取ることの素晴らしさ、 その気づきを促すための言葉の持つ重みというものを 改めて感じたアメリカでの出来事でした。 |
2015.11.07 |
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