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あかちゃんポストはこうして生まれた 蓮田太二(慈恵病院理事長兼院長) 熊本市内にある慈恵病院で、日本で初めての試みとなった 「こうのとりのゆりかご」 (通称:あかちゃんポスト)が 設置されたのは、いまから8年前でした。 これまで預けられた子供の数は120人に上るそうです。 東京の「生命尊重センター」の方から、 「ドイツに匿名で赤ちゃんを預かる 『ベビークラッペ(赤ちゃんポスト)』が あるから見学に行きませんか」 とお誘いをいただき、平成16年に 私は迷わず現地へ飛んだのでした。 当時のドイツでは、70か所のベビークラッペが 設置されており(現在は100か所)、 私は4つの施設を回ることになりました。 年間40人くらいが預けられるとのことで、 一か所当たり2年に一人くらいの利用頻度だと思いました。 預けられた赤ちゃんは、小児科の病院で診察を受け、 異常がなければ専門里親に預けられます。 一方、性別と障害の有無、預けられた日時、 母親に向けては「迎えに来てください」 というメッセージが新聞に掲載されます。 8週間経って親が名乗り出なければ 養子縁組の手続きを開始。 驚いたのは障害のある赤ちゃんには 正常な赤ちゃんより育てたいという 希望がより多くあるということ。 また「子供は家庭で育てられるべき」 という考えが徹底しており、 ほぼすべての子が施設ではなく 新しい家族のもとに送られることでした。 さらに、妊娠葛藤相談所、匿名出産といった 母子の命を守る様々な施策があることも知りました。 中絶手術を受けるという場合でも、 相談所で十分話し合い、 証明書がなければ手術は受けられません。 ただ、視察中、私には一つの疑問がありました。 それは一か所の施設につき、 2年で一人の預け入れしかないにも拘わらず、 70か所もつくる必要があるのかということです。 率直に視察先の小児科医に質問してみると、 私は次のようなお叱りを受けたのです。 「各地に設置していつでも利用できる 状態にしておくことが大事なんだ。 命を何だと考えているか!」 その言葉に命を大切にする教え、 思いを強く感じました。 私は預けられる赤ちゃんが 2年に一人だったらつくらない、 つくると思うのは根本的な間違いなのだと、 ハッと気づかされたのです。 |
2015.10.27 |
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