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江戸の庶民に学ぶ日本人の生き方 月尾嘉男(東京大学名誉教授) 渡辺京二(評論家) 現代文明の中で生きる私たちが 忘れ去ってしまった先人の美徳――。 渡辺京二さんの名著『逝きし世の面影』には、 江戸時代から明治初期の 先人たちの生き方が丹念に綴られています。 【月尾】 日本人が失った美質の例として、 渡辺先生は自立ということを挙げられます。 江戸時代の人たちは自分たちのことは 自分たちでやるのが誇りでした。 その意味でいえば、 現在の政府は国民を過保護にしているように思います。 国民も何かにつけて補助金を求めようとする。 これを拒否するだけの気概を日本人自体が持たないと、 限りなく堕落してしまうと心配しています。 【渡辺】 江戸時代には当然、 ダークサイドなしんどい面はあるんです。 一つの家屋に三世代、四世代が同居していたら、 これはやっていくのが大変ですよ。 そこに人々の知恵や気配りがきちんと働いていたから、 うまく機能していったし、 自立した社会であり得たわけです。 これを個人主義的な教育しか 受けていない連中ばかりだったらもう悲劇です。 それこそ殺人事件に発展しかねない。 もちろん、日本が近代化する段階で 自由を手にしたことは大いに評価すべきでしょうが、 一方で個人主義が蔓延ってしまって、 かつて美徳とされていた家族や社会との 繋がりという意味ではバラバラの状態です。 月尾先生がおっしゃるように、 ろくに働きもしないで貰うものだけ 貰おうという人も増えてきた。 【月尾】 そのとおりですね。 【渡辺】 その点、江戸の人たちは労働に対しても 自主性を持っていました。 これは動物学者のモースが感心していることですが、 彼らは辛い労働をしながら 皆で楽しそうに歌を歌っている、と。 土を固めたり材木を運んだり という労働をただ耐えるのではなく、 それを遊びと同じと捉えるところに 自主性を確保しているわけです。 それに、僕が社会の雰囲気という意味で 江戸時代が何よりもいいと思うのは、 お互いにわだかまりがない、他人を警戒しないことです。 他人とすぐに打ち解けて信用する。 そういうわだかまりのなさが、 いまの日本に根づくといいと思うんですけどね。 でも、それは何気ないことなわけでしょう? デパートに入ろうとして後ろにお婆ちゃんがいたら、 ドアを閉めずに待ってあげるというように、 一人ひとりの些細な心掛けでできることです。 【月尾】 かつての日本社会には、 そういう相互扶助の精神が根づいていたから、 自分たちの地域は自分たちで 維持するという意識も強かったと思います。 |
2015.09.24 |
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