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トップ歯科医が語るプロの流儀 熊谷 崇(日吉歯科診療所理事長) 山形県酒田市に驚くべき歯医者さんがいます。 その名は、日吉歯科診療所の理事長・熊谷崇さん。 「酒田市民の口腔(こうくう)内の 健康状態を世界一にする」 という理念を掲げ、通院する子供の8割以上が二十歳まで 永久歯に虫歯が一本もできない、80代90代になっても20本以上歯が残っている、 など数々の実績を上げられています。 ――どのような治療をされているのでしょうか。 初診の患者さんのほぼ全員が 何かしら歯の痛みや不具合を感じて、 足を運ばれます。 歯医者には痛くなったら行く、 というのが一般的な感覚でしょう。 当然、患者さんは早く 完治させてほしいと思っているはずです。 ただ、私は痛みを緩和するための治療は行いますけど、 すぐに本格的な治療に入ることはほとんどないんです。 ――といいますと? 歯科医療というのは、いまその時だけ 痛みを取り除けばいいとか、 食べられればいいのではありません。 口腔疾患のリスクを管理することは 全身疾患のリスクを管理することへも繋がり、 人々の全身健康へ寄与します。 そして、自分の歯で食べ、不自由なく生活ができ、 自然の美しさを維持する。 それが何よりの目的です。 自分の口の中に何本詰め物があるのか、 それはいつ、どこの歯医者で詰めたのか。 それすらも分からないっていう患者さんが多い。 歯科医にすべてお任せの診療が行われていて、 情報が閉ざされてしまっているんです。 患者さん自身が自分の歯の状態を知り、 考えること。その意識を芽生えさせないことには、 根本的な治療には至らないんですね。 ――口腔の健康に対する患者さんの 意識をまず変えていくと。 ただ、特に開業して間もない頃は、 患者さんにそういうことを言っても 受け入れてもらえなかったり、 中には罵倒されたりしたこともありました。 痛いところをいますぐ治してもらったらいい、 忙しくてメンテナンスになんか行っている時間はないと。 初診で見えて以降、ぱったり患者さんが 来なくなってしまいましてね。 赤字経営になり、自分の貯金を切り崩して スタッフの給料を支払っていました。 いま思い出しても、本当にあの時期は苦しかったです。 そこで患者さんの要求を呑んだほうが 楽だったと思いますけど、それは絶対にしなかった。 ――熊谷先生をそこまでして 突き動かすものは何ですか。 やっぱりそれは歯科医としての責任感、使命感です。 収入が減ろうが、患者さんから罵倒されようが、 患者さんの口腔の健康を守ることが ライセンスを預かっている者の果たすべき責任、使命ですよ。 困難な道から逃げず、自分の信念を曲げずに、 王道を進んでいくことが大事だと思います。 夢を叶えるために敢えて困難な道を選択し、 先入観や既成概念を捨てて、 情熱を傾け創意工夫をしながら、 ブレずに目的を達成しようと努力し続ける人。 それがプロの姿ではないでしょうか。 |
2015.10.08 |
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