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どん底家族の奇跡の再生 橘こころ(エッセイスト) 30万部を超えるベストセラーとなり、 今年5月には映画化もされるという 『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した。 そのモデルとなった、ビリギャルことさやかさんをはじめ、 3人の子供を育てたのが母・橘こころさんです。 夫婦間の大きな亀裂、子供たちは世間や学校から 「ダメな子」とレッテルを貼られる…… ――どのようにして家族を再生されたのですか。 橘 転機となったのは、やはりさやかが高校2年の夏に塾へ行き、 慶應大学を目指して受験勉強を始めたことです。 大学までエスカレーター式で上がれる学校にいたのですが、 成績もさることながら、無期停学のことなどがあって 内部推薦が受けられないだろうと言われていました。 そこで、知り合いに紹介された坪田先生の塾へ 面談にだけ行ってみることにしたんです。 さやかがイヤなら通わなくてもよかったのですが、 とても楽しそうに帰ってきて「私、慶應大学に合格する!」と言ったんです。 私は迷わず「いいね! 全力で応援するね」と喜び合いました。 ――ああ、迷わず「応援する」と。 橘 私は行ける行けないは別にどちらでもよくて、 さやかが「慶應に合格する!」とワクワクしていることが重要でした。 一方、主人は 「おまえなんかが慶應に受かるはずない。 その塾の講師は詐欺師だろう。 おまえを塾に通わせる金なんてドブに捨てるのと一緒だ。 俺は一銭も出さん」 と言いましたから、 塾の費用は私が独自にパートに出たり、 保険を解約したりして工面することになったんですね。 ――そこから慶應大学に合格するまでは様々なドラマがあったようですが、 お子さんの夢を応援する時に心掛けていたことは? 橘 やっぱり応援するのと過保護なのとは 大きく違うと思うんです。 子供の夢を応援したいというのはどんな親でも一緒だと思いますが、 それを自分が叶えさせてやろうという気持ちになってくると、 間違いなのかなって。 うちの長男の例が分かりやすいと思いますが、 確かに小学生の頃は野球が好きで、上手かったと思うんです。 それを主人が喜んで、 「よし、俺が夢を叶えさせてやる」と。 おまえは俺の言うことを聞いていれば間違いない、 ああしろ、こうしろ。 ミスをすれば罵倒して、 時には激しく殴る蹴るを繰り返す。 そこまでいくともう親の自己満足でしかなくて、 結果、子供の才能が伸びるのを阻害したんじゃないかと思うんです。 ――子供の夢がいつの間にか自分の夢になってしまうと。 橘 だから、さやかが入試の直前に模試の結果が悪くて 「もうダメ。慶應、行けない!」と泣いて落ち込んだ時も、 私は「夢を途中で諦めてはいけないわ」とは言いませんでした。 「そんなに辛いなら、やめていいんだよ。 いままでよく頑張ったね!」と。 ただ、娘はそれを聞いて、 逆にもう一度頑張ろうと思ってくれたようです。 そうやって必死で勉強する彼女の姿が、 主人の心を少しずつ変えていきました。 滑り止めの私大受験の日、大変な大雪に見舞われました。 その時、ずっと娘と関わろうとしなかった主人が 「俺が試験会場まで車で乗せて行ってやる」と申し出てくれたのです。 最終的に本命の慶應大学に合格した時は、 本当に久しぶりに主人と2人で手を取り合って喜んだ瞬間でした。 |
2015.03.19 |
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