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お互いに心が通じる 藤井 裕幸(サンドビック前社長) 世界最大の切削工具メーカーを中核に、世界130か国に展開するグローバル企業、 サンドビックグループ。 当時彼らが持っていた 日本に対するイメージは 富士山とか芸者くらいで、 日本のものづくり文化を ほとんど知らない。 それに戦後日本が立ち直ったのは、 俺たちアメリカ人が助けてやったからだ、 という意識しかなかった。 彼らはプライドが高く、 それ故に日本企業で働くことに フラストレーションを感じていたので、 いかにしてオークマで 働くことに誇りを持たせるかが、 とりわけ大きな悩みの種でした。 ──どう克服されたのですか。 藁にもすがる思いでしたが、 何を掴んでいいのか分からなかった。 ところが、ある時、ふと立ち寄った ニューヨークの書店で偶然手にしたのが、 佐藤一斎の「言志四録」だったんです。 当時、佐藤一斎のことは 全く知らなかったのですが、 本を開いた時にパッと 目に飛び込んできたのが、 「一燈を提げて暗夜を行く。 暗夜を憂うこと勿れ。 只だ一燈を頼め」 という一文でした。 なるほど、そうかと。 どんな暗闇でも自分の明かり さえあれば前に進むことはできる。 そのためには、 いまの環境を嘆くのではなく、 自分がどんな一燈になればよいのか、 そのことだけを真剣に 考えようと思ったんです。 そして家内の大きな支えもありました。 ──それで視界が開けたと。 ええ。でも、それだけでは ありませんでした。 佐藤一斎のことを 自分で勉強した上で、 塾みたいな形をとって 日本の文化や歴史も 踏まえてアメリカ人たちに 教えようと決めたんです。 それからですね、 お互いに心が通じるように なってきたのは。 |
2017.05.21 |
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