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世の中に偶然はない 佐々木 茂喜 (オタフクホールディングス社長) 私が家業のオタフクソースに 入社したのは、 大学卒業後の昭和57年でした。 ところが、入社して2年目に、 予て体調を崩していた 父(当時会長)が他界。 さらに生来の自由人だった長男の兄も 自分が会社を継ぐというふうでもなく、 事実上、次男の私が 長男としての役回りを 果たす必要に迫られたのでした。 そして、12年間、 地元の工場で勤務した私は、 営業の経験が一切なかったにもかかわらず、 がんを告知された大阪支店長の後任として 大阪に赴任することになりました。 前任者の金本さんは 非常に仕事ができる方で、 工場次長だった私にたびたび 無理難題を吹っ掛けてきては 激しくやり合った間柄でした。 その方が私を 後任に選んでくださったのです。 しかし、その翌年、 平成7年に直面したのが 阪神・淡路大震災。 幸い大阪支店は何とか営業を 続けることができ、 私は非常時の現場を指揮しながら毎週末、 避難所の公民館などに 焼きそばを焼きに行きました。 そこには治療でやせ細った金本さんも 御子息を連れて参加してくださいました。 その3か月後に金本さんは お亡くなりになりましたが、 その生き様は いまなお私の心に深く刻まれています。 また、私が大阪支店長になった際に 工場を託したある若手社員のことも、 忘れることはできません。 彼は若い頃少々やんちゃをしており、 家族と疎遠になっていましたが、 仕事熱心で人望も篤く、 私の右腕でした。 しかし、私が東京支店長になった平成10年、 肝臓がんを患い 35歳の若さで亡くなったのです。 生前、酒席で 「どうしてそこまで働いてくれるのか」 と尋ねると、彼は 「兄貴が僕のことを 見てくれているからですよ」 と言ってくれました。 そして、亡くなる間際、 もう目も見えない状況でしたが、 病室を訪れて手を握ると、 私だと分かってくれたのか、 「僕を工場に連れて帰ってください」 と言い、それが最期の言葉となりました。 大事な人を次々亡くしたり、 これからという時に 大震災に直面したりと、 どうして自分にばかり 辛いことが続くのだと嘆いたり、 投げやりになりかけたこともありました。 しかし、そのような中で、 私が自然と心の支えにするようになったのが、 「世の中に偶然はない」 という言葉です。 善いことも、苦しいことも、 すべて何かしらの意味、メッセージを携え 必然的に起こってくる。 そう思えると世の中の見え方が替わりました。 |
2016.06.27 |
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