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目に見えない力に助けられて 熊谷 光良(熊谷電気社長) 菅原 昭彦(男山本店社長) 東日本大震災で大きな被害を受けた気仙沼の老舗酒造メーカー男山本店。 震災翌日から事業を再開させました。 【熊谷】 震災翌日、すぐ仕事 を再開されたんでしょう? 【菅原】 はい。帰れない人が2人いたので、 3人で酒蔵に寝泊まりすることにしました。 タンクに仕込んであった 約1,500リットルのもろみは 幸い生きていましてね。 ただ、温度管理をする冷却機が稼働しない。 だから、全く手は下せないんですよね。 情けないかな、ただ見守る ことしかできませんでした。 通常だと3月下旬頃に搾る 予定だったんですけど、 温度の制御ができないから どんどん発酵が進んでしまうんですよ。 16、17日になると、もうあと2、3日で 搾らなきゃもろみがダメに なってしまうって話になりましてね。 そこから必死になって 発電機を探し回っていたら、 ちょうど貸してくれる施設が見つかった。 ただ、2トンある発電機を 運ぶトラックがない。 それもたまたま運んでくれる人が現れて、 酒蔵まで持ってきたのはいいんですけど、 今度は通電させなければならない。 これもある方がろくに 道具もない中で、配線してくれました。 そして、最後は燃料。 一本のタンクを搾り切るのに 2日間かかるんですけど、 2本ありましたので、4日間焚き続ける だけの軽油が必要だったんです。 【熊谷】 当時ガソリンや軽油を手に 入れるのは至難の業でしたよね。 【菅原】 だから一時は諦めようかと 思いましたけど、知り合いの ガソリンスタンドの経営者が メールをくれたんです。 「軽油を何とか手配するから搾れ。 これは私的な関係でやるんじゃない。 気仙沼の産業を絶やさないためだ」 と。もう涙が出てきましたね。 ただ、時期が時期だっただけに 葛藤もあったんですよ。 この軽油があれば どれくらいの車が走れるのか、 この発電機があればどれくらいの 人が暖を取れるのかって。 |
2016.05.31 |
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