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親父の小言 青田 暁知(大聖寺住職) 「親父の小言」 「火は粗末にするな」 「朝きげんよくしろ」 「神仏をよく拝ませ」 「人には腹を立てるな」 「人に馬鹿にされていよ」 「家業は精を出せ」 「年寄りをいたわれ」…… これらの言葉が全国の土産物の 壁掛けや温泉場の手拭いなどに書かれ、 売られているのを見た人は多いと思います。 実はこのもとになったのが 私が住職を務める福島県浪江町、 大聖寺の庫裡に掲げられた 「親父の小言」の45の文章です。 数ある小言の中で私が一番好きなのは 「人に馬鹿にされていよ」 という一文です。 いろいろな人たちから 「怒ってはいけないという意味ですか」 と聞かれますが、それだけではありません。 解釈は人によってまちまちでしょうが、 私なりに「我以外、皆我が師」 ということではないかと受け止めています。 例えば、嫌な人に出会った時、 「嫌な人間だ」と煙たがるのではなく、 その嫌な姿を見て 「自分はああはならないようにしよう」 と自分の戒めとすることもその一つ。 知らないことは知らないと素直に 教えを請うこともそうかもしれません。 とはいっても、実際行うと なるとなかなか難しいもの。 私もある程度、 年をとったいまだからこそ、 理不尽で道理にかなわない話であっても、 人様の話に静かに耳を傾けられる ようになったように思います。 それと「恩は遠くから隠せ」。 これは45の小言の中の 目玉と言える言葉です。 世間に出回っている 「親父の小言」は「恩を遠くから返せ」 となっていますが、オリジナルは「隠せ」、 つまり人に何か施しをしても自慢するな、 お返しを求めるな、陰徳を積め という意味が込められています。 これも常に私の指針になってきました。 父が亡くなる3日前、 私は父の枕元に呼ばれました。 「おまえは大人になったら 偉くならなくてもいい。 立派だと言われる人に なるよう心掛けなさい」 これが私に対する最期の言葉、 遺言になってしまいました。 |
2016.06.19 |
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