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野口英世博士が教える 情熱と忍耐 の大切さ 平澤興講話選集「生きる力」 忍耐ということについて、 野口さんは、みなさんご承知のとおりであります。 この人の研究で一番世界的なもののひとつは、 麻痺狂と呼ばれていた脳梅毒によるところの精神病の決定であります。 梅毒患者のある者に、精神病が現れることがあることは 大体わかっていましたが、しかし確かに梅毒の病原体で この脳梅毒の精神病が起こると決定したのは、野口博士であります。 当時博士は、ロックフェラー医学研究所にいたわけですが、 実はこのロックフェラー研究所を世界的にしたのは 他ならぬこの野口博士であります。 博士の脳梅毒によるところの精神病の発見が、 ロックフェラー研究所を初めて世界的にしたのです。 野口博士はロックフェラー研究所のお世話にはなりましたが、 しかし大きく考えますと、同時にロックフェラー研究所に 大きな貢献があったのではないか、 そしてお世話になった以上の貢献をしていると思われるのであります。 この麻痺狂の発見は「野口の鈍才の賜物である」と、 ある人は言っています。 普通は頭のよいおかげ、「英才の賜物」と言うのでありますが、 そうではない。 これは言葉が少し極端ではありますが、要するに、 そのとき野口博士は、あやしい人間の脳の標本を 一万枚つくったのであります。 それを、二百枚を一組にして見ていったのであります。 昼間に二人の助手が見て、さらにそれを もう一度野口博士が見るのであります。 梅毒の病原体を黒く染めて、それを顕微鏡の下で見るのであります。 梅毒病原体は螺旋体をしています。 しかし、標本は平面ですから、 ひとつの標本では螺旋体には見えず、 ひとつの黒い点として見えているわけです。 それが、ねじをまわしておりますと、 ぼんやりと螺旋状に見えるわけであります。 言うなればそれだけのことですが、その染め方、 標本のつくり方はそれまでにあったものです。 そこのところまでは独特のところはなかったのでありますが、 問題は一万枚の標本をつくって、二人の助手が見て、 さらに野口博士が見て、発見されたことであります。 賢い人はそういうことはなかなかできないのでありますが、 野口博士はそういう見方をされたわけです。 一枚も残さずに見ていかれたというのが、 野口は天才ではなく鈍才だといわれる所以であります。 発見されましたのは、九千九百九十五枚目であります。 それまでは何もなかったと思ったのでありますが、 九千九百九十五枚目で黒い点を発見して、 もう一度今までの標本を見直しますと、 どの標本にもあるのですね。 しかし、ただの点ですから、それが病原体であるとは それまで気づかずにいたのです。 九千九百九十五枚目というのは、 二百枚ずつ五十組に分けた最後の組です。 それも、昼間に二人の助手が見て何もなかったのを さらに野口博士は家に持って帰るのです。 みなさんは一日中標本をご覧になったことは ないでしょうからわからないでしょうが、 一日中標本を見ておりますと後ろ頭が痛くなりますし、 何を見ても標本の形に見えてきます。 海岸に行っても松の木が標本に見えてきます。 そういう病的な状態になるのであります。 それをとにかく徹底的にやったのであります。 |
2015.12.11 |
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