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苦しみを突き抜ける心の持ち方 宮本祖豊(比叡山延暦寺円龍院住職) 比叡山延暦寺で静の行と言われる十二年籠山行。 これを満行した宮本祖豊さんが最大の難関だったと振り返るのが、 身も心も清めるために行われる「好相行」です。 何度も死の淵まで追いやられた宮本さんは、いかにして乗り越えられたのか。 私の心境としては、もはや出し尽くしてしまって どうしようもないという思いでした。 いまから振り返ると、仏さんを感得するには そういう精神状態になることが 求められていたわけですが、 二度のストップがかかるほど私は 多くの煩悩を抱えていたということなのでしょう。 その囚われが、死の淵まで追い込まれて ようやく消えたようで、三度目の行が始まって 一か月ほどで目の前に仏さんが立ちました。 約600日、百数十万回の五体投地を経て好相行を満行し、 ようやく浄土院に入ることができたんです。 ――限界に差し掛かった時には、 どのような心持ちで行をお続けになったのですか。 もう二度と立ち上がりたくないという限界まで来た時に、 あと一回、あと半歩とまた立ち上がる。 その積み重ねが、壁をやぶることに繋がっていくのです。 あと一回やったら今度は死のう、 あともう一回、もう一回と、 ギリギリのところでなお前に出たからこそ 越えられたのだと思います。 印象に残っているのは、 「痛みを忘れなさい」というお師匠さんの言葉です。 行の最中は、立ったり座ったりで膝を床につけます。 何十万回と礼拝していますので、 当然膝の骨が出てきて、床に当たる度に 脳天を突き抜けるような凄まじい痛みに見舞われる。 そんな状況でどうやって痛みを忘れるのかと言えば、 とにかく全身全霊で声を出して礼拝すること。 その一点に集中することでもって 痛みを越えるほどの集中力が発揮され、 越えた時でなければ仏さんを 見る境地には至らないんだと。 無になる、無心になることがいかに難しいことか。 ギリギリのところで集中しなければ 到達し得ない境地であることを実感しました。 |
2015.11.23 |
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