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師弟関係はここから始まる 占部賢志氏(中村学園大学教授) 文豪・夏目漱石が教師だった頃の 知られざる一面。 その生徒は4年生でクラスの級長だった。 初めて教室に入ってきた漱石は赤い靴を履いていた。 だから、「赤靴」というあだ名がつくはずだったのだが、 結局つかなかったそうです。 なぜか。 それは漱石の学力に圧倒されたからだというのです。 漱石はすーっと入ってきて教壇に上がるや、 英語のテキストを開いて読み出した。 そしたら、その発音があまりに見事で 生徒たちはびっくりしたそうです。 その頃のテキストは数学でも何でも原書が多く、 日本人の先生はジャパニーズ・イングリッシュで読むわけです。 ところが、漱石はネイティブに劣らない発音で読む。 これに生徒は圧倒されるのです。 この授業では、続いて級長の彼が当てられ、 読んで訳すように命じられる。 そこで読んで訳したところ、 一カ所だけ訳が間違っていると指摘を受けた。 生徒は、この単語は予習のとき、 字引で調べたもので間違いはないはずですと答えると、 漱石は「では字引が間違っているから、 その字引を訂正するように」と応じたといいます。 こうして生徒たちのあいだには 今度の先生はすごいという評判が立ち、 「赤靴」というあだ名を引っ込めたというのです。 これなんですよ。 「この先生すごい」と生徒が感じたところから、 師弟関係は始まるのです。 生徒が何一つ圧倒されるものがなくて、 教育が成り立つはずはありません。 そんなもの、形式は整っていても似非(えせ)教育ですね。 |
2015.07.18 |
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