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大豆100粒運動 辰巳 芳子(料理研究家) 大空襲のど真ん中を生き抜いた料理研究家 料理研究家として93歳のいまも 全国を駆け回る辰巳芳子さん。 ──昔はどこの家庭にも神棚があるのが当たり前でした。 それはとても大事なことで、神仏を念じる心を 持たせることは、その子の人生を助けます。 というのも、私、戦争末期の大空襲の時に、 そのど真ん中にいたんですよ。 2時間あるかないかの間に500キロの爆弾が、 90発も一気に落っこちてきた。 なぜ90発だと言えるかっていうと、空襲が終わった後に 爆弾の落ちた穴を数えて歩いたからです。 ──よくご無事でしたね。 私は防空壕の中で伏せていましたけど、 爆風が風を切る音ってすごいものです。 それこそナンマンダブじゃないですけど、私はマリア様を念じて、 空襲が終わるのをひたすら待っていました。 私のすぐ隣に名古屋大学の物理学者が伏せていらしたけど、 がくがく震えているだけでした。それこそ物理学者であれば、 爆風をどう避ければいいか、物理学的に考えて 助けてくれるかと思っていたけど、全然ダメでしたね。 ──辰巳さんのほうが、よほど腹が据わられていたようですね。 震えていなかったのは私ともう一人、 義侠心溢れるお爺さんだけでした。 その方は防空壕の扉が飛ばないように、 必死になって扉に張りついてくれていたんです。 やはりそういう時に本当の裸の姿の人間が出てくる。 つまり覚悟の決まっている人と決まっていない人の差ですよね。 自分中心に考えるのではなくて、自分を空っぽにして 「ナンマンダブ、ナンマンダブ」と念じることができる人は、 どんな状況にあっても何とか持ちこたえられると思いますね。 なぜこういう話をするかと言うと、 いまは国際情勢が厳しいだけに、 爆弾が落ちてくるかどうかは別にしても、 私たち日本人が不測の事態に直面する 可能性は十分にあると思うんですよ。 ところが、この国はどこまで行っても持たざる国です。 資源が乏しい。その中にあって持とうとすれば持てるもの、 それが米と大豆です。これは日本人の勤勉さによって、 何とか維持していかないと国を支えることができません。 でも、その2つがあれば、日本人はどんな苦労だって 乗り越えていけるだろうと私は思っている。だからこそ、 私は「良い食材を伝える会」を立ち上げ、 「大豆100粒運動」を続けてきたんです。ですから 「大豆100粒運動」に関して言えば、 大豆のことなら任せてくれっていう人間を 5万人はいるようにしておきたいですね。 ──5万人ですか。 そう。為すことを知らずっていう人間しかいなかったら、 もしもの時に蜂の巣を突いたようになってしまうだけです。 でも、土を見て、豆を手にした時に、 豆なら蒔けるじゃないかって思える人間が5万人いれば、 それが国を落ち着かせられる。これなのよ、私の狙いは。 |
2018.08.23 |
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