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人生の師に学んだこと 星 弘道(全日本書道連盟理事長) 現代日本を代表する書家星 弘道さん、72歳。 人生の師は、 私に漢詩、漢文を教えてくださった 猪口篤志(あつし)先生。 この方はね、まるで『論語』の 世界に生きているような人で、 人格的に立派な人でした。 猪口先生も教えるということに 対してはすごい情熱を持っていらして、 教わろうという気のある生徒には もう徹底して教えてくださった。 それから全然偉ぶらない。 ──いまも心に残る猪口先生の 教えなどはございますか。 猪口先生がある教育者の方の例を挙げて、 次のようなお話をしてくださったのは いまでも印象に残っています。 ある日、その先生の講義には 一人の生徒しか来なかったと。 しかし、先生は 「今日の授業はやめにしよう」 ではなく、逆に一人の生徒のために ものすごい情熱を持って講義をした。 そして、 「どうして一人のために、 そこまでしてくださるのですか」 と質問した生徒に対して、 先生はこう答えた。 「たった一人でも、 君が貴重な逸材かもしれない。 だから一人でも手を抜いてはいかんだろう」 と。 猪口先生は、人を育てるとは どういうことかを身をもって 教えてくださった気がしますね。 ──師の教えを愚直に 実践されてきたことで、 目標や志を実現されてこられたのですね。 やはり、継続することが 物事を成就させるために 一番大事だと思いますよ。 私もぐっと燃え上がっては、 途端に冷めるというか、 性格的に飽きっぽいところがある。 その欠点が分かっていますから、 毎日何でもいいから 書くことを自らに強いてきました。 ──何事にも通じる心構えですね。 ええ。でも、書っていうのは これで極めた、これでもういい っていう世界ではなくて、 おそらく一生、生涯現役で苦しむ ようなものではないかと思っています。 |
2016.12.22 |
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