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人間に備わった不思議な力 大倉正之助(大倉流大鼓を受け継ぐ能楽師) 村上和雄(筑波大学名誉教授) 大鼓の奏者として、独創的な活動を続ける大倉正之助さん。 【村上】 限界を超えるような挑戦をしたことで、 新たな表現活動への道が開けたわけですね。 【大倉】 限界を超えるということについて言えば、 私はこれまでに何度も死んでも おかしくないような 大事故に遭っているんですよ。 【村上】 何度も? 何が原因ですか。 【大倉】 若い頃からオートバイが好きで、 それが主な原因です。 でも、これまで骨折しても ギプスをしたことは一度もなくて、 全部自然治癒力で治してきました。 例えば、普通だったら ギプスだらけになって寝かされて、 それこそ何か月も 入院しなければいけないような 大怪我をしたこともあります。 ところが私の場合、 大怪我をした三日後とか 一週間後に舞台があるわけで、 とてもベッドで横になっている わけにはいきません。 【村上】 どうするのですか。 【大倉】 何とか三日後には 舞台に立てる状態にしたい、 と考えているととにかく いろんな発想が湧いてくる。 熱いお湯に入ってみようとか、 氷水に浸けてみようとか(笑)。 そういう時はもう 飲まず食わずの状態で、 とにかく自分の身体を極限に追い込む。 あとは動物のように 丸くなって寝てしまう。 ある時は丸太のように 脚が腫れ上がって、膝が 曲がらないこともありました。 これでは舞台で正座を することもできません。 そこで熱いお湯と氷水に 交互に足を浸けていたのですが、 そのうちにギュッと膝が曲がった。 その時は、「これで正座ができるぞ」 って喜んで、舞台当日は 知らん顔をして演奏していました(笑)。 【村上】 それだけのことがあっても、 バイクはやめられないんですか。 【大倉】 やめられないですね(笑)。 ただ、そうしたことを経て、 人間には不思議な力というか、 可能性が備わっていることを 実感しましたね。 |
2016.12.06 |
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