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肉体の目の代わりに心の目が開かれた 鈴木秀子(国際コミュニオン学会名誉会長) 北海道でホテル、ゴルフ事業を営む男性経営者がいます。 この男性は特に社員を厳しく怒鳴りつけながら ワンマン経営を続け、地位や名誉を手にし、 財を成してきた成功者の一人です。 男性は持病の糖尿病で視力が低下したため、 ある時、目の手術を受けることになりました。 医者からは 「手術の成功の確率は97パーセントです」 と伝えられ、男性も大船に乗ったつもりでいました。 ところが、この手術は失敗に終わり、 ついに両目を失明してしまうのです。 これは全く思ってもみないことでした。 男性にとって、失明という試練は耐えがたく、 それからというものは、すべてを失ってしまったか のような絶望感に駆られる毎日が続きました。 「どうして自分だけが……」 と悶々とした状態だったといいます。 少しでも辛さを紛らすために会社に出勤し、 仕事に打ち込んでいた男性に、 数か月後、一つの変化が起きます。 それまで全く気づくことのなかった、 新鮮な感覚を覚えるようになったのです。 それは社員や周囲の人たちがかけてくれる 温かい思いやりの心でした。 会社に顔を出した男性に社員たちは手を貸し、 「社長と出会えて幸せです」 「社長に来ていただくだけで大きな励みになります」 と優しく言葉をかけました。 これまで厳しく接し、疎まれていると思い込んでいた 社員たちの真心と愛情を、 深く噛み締めている自分がいたのです。 社屋から一歩外に出れば、 心地よい風や鳥のさえずりが、 疲れ切った心を優しく包んで 癒やしてくれます。 男性は、何気ない風の変化から冬から春、 春から夏へという季節の移ろいを敏感に 感じ取るようになっていきました。 男性は、私にこのように話してくれました。 「私は目が不自由になったことを、 不幸だとは思いません。 肉体の目の代わりに心の目が開かれ、 見えなかった世界を見ることができる ようになったのですから」と。 |
2016.01.17 |
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