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開き直りから「はやぶさ」のミッションは生まれた 日本の小惑星探査機「はやぶさ2」の投下したカプセルが地球に帰還し、 オーストラリアで回収されました。 「はやぶさ」初号機のプロジェクトマネージャを務めた川口淳一郎氏のお話。 〈川口〉 お恥ずかしい話ですが、僕は何かを心に決めて 一貫性を持ってやってきたということはなかったですね。 アポロ計画の月探査をテレビで見て 小さい時から宇宙に関心を持っていたことは確かですけれども、 大学卒業間際になっても特段、 宇宙工学を強く志していたわけではありませんでした。 〈齋藤〉 しかし、「はやぶさ」プロジェクトの構想を纏めて、 長年チームを牽引しながら奇跡の帰還を果たされた 川口先生の華々しい功績は誰もが認めることですよね。 〈川口〉 このプロジェクトも、言ってみれば ある種の開き直りから始まったことだったんです(笑)。 僕がこの計画を形にして提案したのは1990年代ですが、 検討を始めたのはそのずっと前からです。 その頃、既にアメリカやソ連は月に行ったり、 火星や金星などの惑星に行くための プロジェクトを動かしたりしていて、 日本の宇宙科学は相当遅れていたんです。 NASA(アメリカ航空宇宙局)との差は歴然でした。 それで僕たちはNASAと一緒に勉強会を重ねながら 「小惑星ランデヴー」を一つの目標として掲げました。 要は探査機が惑星の近くにい続けることです。 それだけでも我われにとっては大きな進歩だと思っていたんです。 ところがNASAはいきなり自分たちだけで プロジェクトを立ち上げて、それを実現してしまう。 〈齋藤〉 NASAに先を越されてしまった。 〈川口〉 これはとても辛いことでしたね。 僕はアメリカのやりそうなことをやって、 つまみ食いされて二番煎じに甘んじるのはどうしてもいやでした。 やっぱり我われが本当に目指すべきゴールは 誰もなし得たことのない「小天体のサンプルリターン」 (小天体の地表のサンプルを採取し地球に持ち帰ること)だと 改めて確認し合いました。 アメリカのやろうとしないものをやる。 その開き直りから「はやぶさ」のミッションは生まれたんです。 |
2020.12.08 |
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