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その態度が職人として見どころがある 川北 良造(人間国宝・木工芸家) 松田権六、氷見晃堂。共に人間国宝である二人に師事し、 「挽物の神様」と呼ばれる人間国宝・川北良造さん。 挽物の仕事はお椀や鉢など決められた形のものを 一日に何百個とつくっていくものですが、 修業時代にはその中でこれはよくできたというものは 必ず父のもとに見せに行きました。 ところがこれなら褒めていただけるだろうと 意気揚々と持っていったものを、父は一目見ただけで、 黙って床に打ちつけるではありませんか。 最高の出来だと思ったものに対して、なぜそのような 仕打ちをするのかと私の心は穏やかではありません。 しかし、父がそのようなことをするには、 やはりどこかに欠点があるのではないか。 そう思い直して打ちつけられたものを拾い上げて、 その出来具合をじっくりと見直す。 そんなことが度々繰り返されました。 あれは28歳で初めて日本伝統工芸展に 出品しようとしていた時でした。 ようやく一人前の職人として独り立ちした私に、 父がたった一言「おまえは職人として見どころがある」 と口にしたことがありました。それまで一度として 褒められたことがないだけに驚きながらも、 私はどこに見どころがあるのかと尋ねてみました。 「自分はおまえが褒めてもらえると 思って見せにきたものを土間に打ちつけた。 しかし、それをすぐに拾い上げて一所懸命に 観察して考えていた。その態度が職人として 見どころがあると思っていた」 いま思えば父は私の態度をずっと観察しながら、 「この子は職人の道に適しているか」 「辛抱強く一つの道を進んでいけるか」 と心配しながら見てくれていたのでしょう。 |
2019.03.26 |
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