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一人の人間として アメリカ人のある神父の話です。 彼は若い時、インドのマザー・テレサの 「死を待つ人の家」でボランティアに従事していました。 そこでの彼の役割は、風呂に入れられた病人を バスタオルで受け止めることでした。 ところが、始めたばかりの頃、 痩せこけて体が変形した男性が目の前に現れ、 思わず後ずさりしてしまうのです。 後ろに並んでいたボランティアの人から強く背中を押され、 勇気を振り絞って男性を抱きかかえました。 怖じ気づく神父を見るに見かねたのでしょう。 マザーが代わりに男性を受け止め、体を拭いながら 「あなたは大切な人です。 あなたは神様から許されて愛し抜かれています」 と静かに語り掛けました。死人同然の男性が うっすらと目を開いて微笑みを浮かべたのは、 まさにその時でした。 「たとえ死の間際であっても、憐れみや同情ではなく 一人の人間として対等に接してくれる人が側にいるだけで、 人は温かい愛に満ちた心に生まれ変わることができるのですね」 神父は私にこのように話してくれました。 マザーの何気ないひと言によって人が 甦っていく瞬間を目にしたことは、神父にとって 終生忘れがたい出来事であったことは間違いありません。 マザーが死にゆく男性に施したのは、 何も特別なことではありません。一人の人間として敬い、 神様から愛されていることを祝福した、それだけのことです。 しかし、そのひと言は苦しみと絶望の間を 彷徨っていた男性には、何よりの喜びであり、 力となるものでした。 よき人生は小さなことの積み重ねです。 身近な人とさりげなく心を通わし、 相手に敬意を持って接するという小さな行いの中に、 大きな喜びを感じ取れる人間になりたいものです。 |
2019.03.15 |
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