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教わる 室瀬 和美(漆芸家/人間国宝) 漆芸家で人間国宝の室瀬和美さん。 漆の道を歩んでいく上で最も刺激的な学びを得たのは、 蒔絵の人間国宝・松田権六さんだったと言います。 ──いまでも印象に残っている松田先生の教えはありますか。 教えは本当にいっぱいありましたけど、特に私が後進に伝えているのは、 ものをつくる作家として生きていくために必要な「三つの学び方」のお話です。 松田先生がおっしゃるには、学び方には三つの段階があって、 まず第一段階は「人から教わる」ことだと。 学校の先生や先輩、職人であれば師匠から直接教わる。 そして第二段階は、「ものから教わる」。 だいたいの人が、「先生から学んで、勉強になりました」で 終わってしまうけれども、実はその教えてくれた先生も 一世代前の人に教わったことを伝えてくれているわけだから、 せいぜい、三代前くらいの技術しか教われない。 ただ、例えば漆工芸では、千年前につくられた作品がいまなお腐らずに残っている。 その千年前の技術や、途中で途絶えてしまった仕事を教えてくれるのは、 人ではなく、作品そのものがいろいろな情報を出してくれるんだよと。 ──千年前の作品が教えてくれる。 ただ、「ものから教わる」といっても、 ものが喋ってくれるわけではないですから、 学生の私には全然ピンときませんでした。 そして、最後の第三段階の学び方は、「自然から学ぶ」。 人やものから学ぶことは あくまで先人や既に形あるものから教わることであって、 自ら作品を創り出していくことには繋がらないと。 要するに松田先生は、木々や風や日光など、 四季折々に変化する自然から生まれるエネルギーをキャッチし、 それを自分の表現にどう生かしていくかが、創作者として最も大事だと言うんですね。 そして、平安、鎌倉、江戸時代の人も、 それぞれ皆その時代に感じたものを表現しているのであって、 彼らの真似をしてもしょうがない。 君はいま生きている時代に感じたものを表現するんだと。 |
2017.12.13 |
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