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金メダリストが伝えたいこと 全日本女子柔道強化コーチ 古賀 稔彦 よく「心、技、体」といわれますが、最初から完全ということはありません。 最初は誰だって弱いものです。みんな、体力がないから、一生懸命鍛えて体力を つけていく。みんな技がないから、練習して、身につけていく。そして、心も訓 練によって、強くしていくのです。 自分で気づいて、努力して鍛えていけば、それぞれがすばらしいものになってい くんです。 そのための方法が「諦めからは、決して何も生まれてこない。だからいつも諦め ずに、夢の実現のために、何をどうなすべきかを、自分で決めて、練習、稽古、 試合を重ねる」ということの一語に尽きます。 そうすることによって、だんだん逞しく、強く、すばらしいものになっていくん です。だからこそ、そのことを子供たちに伝えていこうと思うのです。 もう一つ是非伝えたい事があります。 それは一般に柔道は、いつも真面目一本で、堅苦しい考え方を持っていなければ いけないと思われてますが、そんなことはありません。私の古賀塾ではそんなこ とは言ってません。 「日常、誰でもが当たり前にやれることを、当たり前にやれる人になろう」と言 ってるだけです。 例えば、朝だったら、 「お早うございます。お早う」と元気よく大きな声で、はっきりと挨拶する。 人が困っていたら、さっと手助けしてあげる。 逆に自分が助けられた時は心から 「有難うございます。有難う」と素直にお礼が言えること。 そんなことは当たり前だと言う人がいますが、なかなか難しいのです。 しかし、大人になればなる程、照れくさい、面倒くさい、恥ずかしいと、言わな い人が多くなってくるんです。 子供に教えていくべき大人がそれでは困ります。 まず、大人がしっかりと手本を示してこそ、黙っていても、ちゃんと子供たちに 伝わるのです。 当たり前のことが、当たり前にできる、そういうことを、柔道の練習の中から、 子供達の身につけさせたいと思ってやってます。 まさにリーダーが率先躬行しなければ、いくら口で言って聞かせても効果があが りません。訓練によって強くなっていくのは当たり前のことなんです。 さて、最初塾を開いてから、半年くらいは胃が痛くなりました。それは殆どの子 供が、それぞれ個性があり、個人的な環境に育っているために、集団生活に慣れ てなく、全くの初心者ですから、バラバラなので、どう対応したらいいのかわか らなかったのです。 一般に柔道の稽古をさせれば、自然と礼儀正しくなるとお母さん方は思っている のです。勿論、武道は「礼に始まり、礼に終る」というくらいですから、練習し ているうちにそうなるのは、当然と言えば当然なのです。でも、最初はなかなか 思うようにならず、苦労しました。 そこで、私は先ず、子供たちの考え方を聞いてみようと思いました。どうしても こちらから、ああしろ、こうしろとなり勝ちだからです。 まず「お前達はどうなりたいのか」と質問しました。すると一斉に 「強くなりたいです」という返事が返ってきました。 「じゃあ、どうすればいいと思うか」と聞くと 「練習しなければ駄目です」 「練習は遊んでいて、できると思うか」と聞くと 「駄目です」と答えました。 「じゃあ、どういう風に練習したらいいか」と聞くと 「一生懸命にやらなければ、強くなれません」と最終結論が子供たちから、出て きました。 「よーし、お前達の気持ちは、よーくわかった。それなら、今日から我々先生た ちも一生懸命にサポートするから、みんなも一生懸命に練習して、ついてこい」 と言いましたら、一斉に 「ハーイ、頑張ります。よろしくお願いします」と元気よく答えが返ってきまし た。それから胃の痛みが消えました。 人から押し付けられたのではなく、論理的に納得して、自分の口から誓ったこと ですから責任を感じて、真面目にやってくれてます。 たまにさぼっていると、近づいて、自然に 「どうなりたかったのかな」と聞いてみると、 「練習して強くなりたいのです」 「そうか、忘れてはいないんだな。そして今、何しているんかな」 「ハイ、遊んでます」 「遊びながら、稽古はできるかな」 「いえ、駄目です。しっかり練習します」 そうすると、一生懸命にやりだすのです。 じっくりと本人に考えさせて、本人の口から言わせるようにして、納得させるこ とが大事なことです。 |
2013.05.07 |
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