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「果決」こそリーダーの条件 松川昌義(日本生産性本部理事長) 心の支えとなる座右の銘を持つことは、 山あり谷ありの人生を歩んでいく上で 非常に大事なことだと思います。 特に逆境に立たされた時、そういう言葉が自分を鼓舞し、 果敢に立ち向かっていく力を与えてくれるのです。 組織を導くリーダーとして、 私が常に反芻(はんすう)してきたのは、 陽明学者・張詠(ちょうえい)の言葉です。 「事に臨むに三つの難あり。 能く見る、一なり。 見て能く行う、二なり。 当に行うべくんば必ず果決す、三なり」 事に臨む、変化に対応していくには 三つの難しいことがあります。 一つは対象をよく見て 的確に判断するための観察力、調査力。 二つ目はそれを行動に移す実行力。 しかしそれだけでは不十分で、 その上にさらに重要なのが果決であるということです。 これは、日本生産性本部における私の上司であり、 人生の師とも仰ぐ牛尾治朗会長が、 安岡正篤先生から教わった言葉として お話しくださったものです。 安岡先生は、果決という言葉の意味を、 次のように説いてくださったそうです。 果物の木に咲いている花を すべて実らせてしまってはいい果実は採れない。 どの花を残すかを考え抜き、勇気を持って決断し、 選んだ花から立派な実を育てなければならないと。 よし、これでいこう。 折しも強い危機の最中にあった私の心に、 この言葉はストレートに響き、肚を固めることができたのでした。 それは、私が日本生産性本部の理事長に就任した 二年前のことでした。 その年の三月に発生した東日本大震災により、 予定していたプロジェクトの多くが中止や規模縮小を 余儀なくされ、経営は赤字転落。 このまま手をこまねいていては 生産性本部の存続そのものが危うくなる―― 損傷した日本生産性本部のビルを見上げながら 強い危機感を抱いていた頃に教わったのが、 この果決という言葉でした。 日本生産性本部は昭和三十年、 経済同友会の設立に尽力された郷司浩平さんが、 当時まだ生産性の低かった日本企業の近代化を 促進するために設立された財団法人です(現在は公益財団法人)。 しかし、その後社会情勢は大きく変わり、 時代にそぐわない事業が増えてきたにもかかわらず、 旧弊を引きずりなかなか思い切った改革に 踏み出せずにいました。 理事長就任前から牛尾会長の熱心なご指導を受け、 ピンチをチャンスに変えよと繰り返し 説いていただいていた私は、 この震災を機に事業再生に 根本から取り組もうと決意を固めたのです。 そこで六月に理事長に就任すると、 私は「事業再生タスクフォース」を立ち上げ、 既存の百の事業を徹底的に精査し、 各々の経常利益まで分析しました。 その分析結果をもとに、 私は一つひとつ存続の可否を決断。 まさしく果決を実践したのです。 それは容易な作業ではなく、考えに考え、 思い悩んだ末に決断を下した体験から、 私は果決という言葉の重さを実感したのでした。 |
2013.08.12 |
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